アカロア港でのシロナガスクジラ再出現、海洋保護の進展を示すか
編集者: Olga Samsonova
2025年10月17日、ニュージーランド南島のAkaroa(アカロア)港において、絶滅危惧種であるシロナガスクジラが目撃された。この事象は、同海域での2020年以来の出現であり、地元関係者からは地域の海洋環境の健全性回復に向けた前向きな指標として受け止められている。
シロナガスクジラは最大で体長30メートルに達する地球最大の動物であり、生態系においてオキアミ個体数の制御に不可欠な役割を担う。しかし、世界的に船舶衝突、騒音公害、気候変動といった複合的な脅威に直面している。特にニュージーランド周辺海域では、海底掘削に伴う地震活動が特有の懸念材料とされてきた。今回の目撃は、ニュージーランド国内で推進されている海洋保護イニシアチブが一定の効果を発揮し始めている可能性を示唆する。
国際捕鯨委員会(IWC)のデータによれば、南極海のシロナガスクジラ個体群は、1904年時点の推定256,000頭から、1971/72漁期までにはわずか395頭、すなわち初期資源の0.15パーセントにまで激減した。商業捕鯨禁止後、資源は年率6.4パーセントで増加したものの、1997年時点でも2,280頭(初期資源の0.9パーセント)に留まっている。この回復の遅れの一因として、同じ餌資源であるオキアミを利用するミンククジラの個体数増加との生態的競合が指摘されており、アカロアでの出現は広範な生態系レベルの変化を反映している可能性も考慮されるべきである。
ニュージーランド周辺の海洋保護の取り組みは、個別の保護区設定を超えた包括的なアプローチへと進化している。例えば、南太平洋の島国ニウエでは、2023年9月から「海洋保全コミットメント(OCC)」という資金調達スキームが開始された。これは、個人や団体が250ニュージーランドドルを支払い、保護区内の1平方キロメートルの海を20年間保護するスポンサーになれる制度である。ニウエの領海面積の約40パーセントにあたる127,000平方キロメートルを対象とし、集められた資金は気候変動に強い自然環境の推進やブルーエコノミーの発展に充てられる。このような地域主導の活動が、周辺海域全体に好影響を及ぼしている可能性も考えられる。
また、クジラの権利に関する議論も進展を見せている。2024年4月上旬、ニュージーランドのKiingi Tuheitia氏とクック諸島のKaumaiti Nui Tou Ariki氏は、ラロトンガ島で「He Whakaputanga Moana」宣言に署名した。この宣言は、クジラの文化的価値と海洋生態系における役割を認め、彼らの自由な回遊権の保護や海洋保護区の設置、専用基金設立を国際的に求めている。クジラに人格権を与えるという概念は、裁判を通じて保護を強化する道を開くものであり、世界的な関心を集めている。
シロナガスクジラは、体長が25~26メートル、体重が100~120トンに達するヒゲクジラ類であり、1864年の近代捕鯨開始以降、特に1920年の母船式捕鯨導入後に捕獲数が激増し、1966年までに総数30万頭以上が殺害されたと推定されている。この歴史的背景を鑑みると、2025年10月17日のアカロアでの目撃は、地球最大の動物の生存戦略と保全努力が交差する、注目すべき瞬間として位置づけられる。
ソース元
The Cool Down
Boating New Zealand
Star News
NZ Herald
Black Cat Cruises
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