2025年8月上旬以降、原油価格は11%以上下落し、弱気市場(ベアマーケット)に突入しました。この価格下落は、OPECプラス(OPEC+)諸国の生産量増加と、地政学的な状況の変化によって引き起こされています。
OPECプラスの主要8カ国は、2025年8月に日量54万8000バレルの原油生産枠拡大に合意しました。これは、過去の生産抑制策の解除を加速させる動きであり、安定した経済成長と低水準の在庫の中で市場の均衡を図ることを目的としています。この増産計画は、当初の予定よりも早く、2025年9月までに生産抑制策の解除を完了させることを意味します。
地政学的な要因も原油価格に影響を与えています。特に、ロシア、ウクライナ、米国間の和平交渉の可能性が浮上しており、ロシア産原油に対する制裁緩和への期待が世界の供給と価格にさらなる影響を与える可能性があります。これらの交渉は、紛争の終結に向けた動きとして注目されています。
米国エネルギー情報局(EIA)は、2025年第4四半期のブレント原油価格の平均を60ドル未満と予測しています。これは、2020年以来初めて60ドルを下回る水準となり、世界の石油供給過剰を示唆しています。EIAは、2025年12月には米国の原油生産量が日量約1360万バレルという過去最高水準に達すると予測していますが、価格下落により2026年には生産量が減少すると見込んでいます。
一方、株式市場は底堅さを見せています。SPDR S&P 500 ETF Trust(SPY)は643.96ドルで0.00103%上昇し、iShares MSCI ACWI ETF(ACWI)は133.53ドルで0.00090%上昇しており、投資家心理は比較的安定していることを示唆しています。これらの市場の動向は、原油市場の供給過剰懸念とは対照的な動きを見せています。
過去の事例を見ると、原油価格が弱気市場入りする際には、供給過剰や需要の伸び悩みといった要因が複合的に作用することが多いです。例えば、2014年から2016年にかけて原油価格は弱気市場を経験しましたが、これはシェールオイルの生産拡大による供給増が主な原因でした。現在の状況も、OPECプラスの増産と世界的な需要の伸び悩みという構造的な要因が重なり、供給過剰感が高まっていることが価格下落の背景にあると考えられます。