米国は2025年8月27日より、インド原産の物品に対し50％の関税を課すことを発表しました。これは、インドによるロシア産石油の輸入継続に対する報復措置であり、両国間の貿易関係に深刻な緊張をもたらしています。
この関税措置は、インドの米国向け輸出の半分以上に影響を与え、特に繊維や宝石などの労働集約型産業に大きな打撃を与えると予想されています。これにより、これらのセクターからの輸出が70％減少し、相当数の雇用が失われる可能性があります。経済専門家は、この関税によりインドの経済成長が年間0.8パーセントポイント押し下げられると予測しています。
米国国土安全保障省は、この関税が8月27日以降に米国に入国する物品に適用されることを確認しましたが、人道支援物資や輸送中の物品は免除されるとのことです。この貿易摩擦は、特にインドと米国間の貿易に依存するセクターにおいて、世界の市場に即時の影響を与える可能性があります。
米国は、インドがロシア産原油や防衛装備品の輸入を継続していることを、米国の国家安全保障および外交政策に対する「脅威」であると指摘しています。この措置は、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策の一環とも見られており、米国の貿易赤字削減とインドの輸入障壁引き下げを目的としていると分析されています。
インド政府はこの関税措置を「不公平、不当、かつ不合理」と非難しており、自国の国益を守るためのあらゆる措置を講じると表明しています。インドの輸出業者は、新たな関税により価格競争力が低下し、米国市場での需要減少につながることを懸念しています。多くのインド企業にとって、米国は主要な輸出市場であり、同様の需要を持つ新たな市場を開拓することは困難であると見られています。
インドの繊維・アパレル産業は、世界輸出の約4.1％を占めており、そのうち約29％が米国向けです。今回の関税により、インド製品はバングラデシュやベトナムなどの競合国に対して不利な立場に置かれることになります。インド政府は、この状況を乗り越えるために、国内生産の強化と輸出市場の多角化を進める方針です。