故レナード・A・ラウダー氏が長年かけて収集した、4億ドル(約600億円)を超える価値を持つとされる美術品コレクションが、サザビーズのオークションに出品されることが発表されました。エスティローダー・カンパニーズの名誉会長を務めたラウダー氏は、92歳で生涯を閉じましたが、彼の芸術への深い造詣と情熱は、この比類なきコレクションを通じて今もなお息づいています。
オークションの目玉となるのは、グスタフ・クリムトの「エリザベート・レーダーの肖像」です。この作品は1億5000万ドル(約225億円)以上の評価額が見込まれており、クリムトがウィーンの黄金時代に制作した数少ない全身肖像画の一つであり、これまでオークションに出品されたことがないという希少性も相まって、コレクターたちの間で大きな注目を集めています。この作品が予想落札価格を達成した場合、2023年にサザビーズ・ロンドンで記録されたクリムトの過去のオークション最高額(約1億675万ドル)を大幅に更新することになります。さらに、クリムトの風景画である「花咲く草原」と「アッター湖畔の森の斜面」も出品されます。これらもまた、オークション市場に登場するのは初めてのことです。
コレクションには、アンリ・マティスの6点の彫刻作品や、エドヴァルド・ムンク、アグネス・マーティンといった著名な芸術家たちの作品も含まれており、ラウダー氏の広範な芸術的嗜好を物語っています。
このオークションは、2025年11月18日にサザビーズのマディソン・アベニューの新本社ビルで開催されます。この歴史的なブルータリズム建築であるブロイアー・ビルディングは、かつてホイットニー美術館やメトロポリタン美術館、フリック・コレクションの仮住まいとしても使用された場所であり、サザビーズの新たなグローバル本社のこけら落としとなる記念すべきイベントとなります。
ラウダー氏のコレクションは、単なる美術品の売買を超え、芸術が持つ普遍的な価値と、それを次世代へと繋いでいくコレクターの役割を浮き彫りにします。彼の芸術への深い理解と、それを共有しようとする姿勢は、アート市場全体に新たな活気をもたらす可能性を秘めています。このオークションは、芸術が持つ力を再認識し、新たな価値創造の機会をもたらすものとして、多くの人々にインスピレーションを与えることでしょう。