8月4日、TAPエアポルトガル便TP484便(リスボン発ニース行き)で、機内全トイレの機能停止とフランスの航空交通管制(ATC)との無線通信における誤解が重なり、緊急事態寸前の状況が発生しました。乗客106名を乗せたエンブラエルE190型機では、機内の全トイレが使用不能となる事態が発生し、パイロットは乗客の快適性を考慮して飛行時間の短縮を目指し、優先的な着陸許可を要請しました。しかし、この要請の際に「toilets(トイレ)」という単語が、パイロットの発音やアクセント、あるいは管制官の聞き取り方によって「pilots(パイロット)」と誤解された可能性が高いとされています。
この誤解により、航空交通管制官は乗務員の操縦士に問題がある、あるいは操縦不能な状態にあるのではないかと推測しました。パイロットは緊急事態や「メーデー」を宣言しているわけではないことを繰り返し強調し、問題はトイレにあるのであって、操縦士やオートパイロットではないと説明しましたが、混乱は収まりませんでした。管制官同士のやり取りでは、「パイロットがダウンしたのか、オートパイロットの問題か…わからない」といった声が聞かれ、最終的にATCセンターはアラートを発令するに至りました。英語が航空分野の標準語であるにもかかわらず、単語の音声的な類似性や非ネイティブスピーカー特有のアクセントが、深刻な誤解を生む可能性が指摘されており、専門家は「lavatories(ラバトリー)」のような代替表現を用いることで混乱を避けられた可能性を指摘しています。
最終的に、TP484便は予定より数分早くニースに無事着陸し、技術チームによってトイレの問題が確認されました。このインシデントは、たとえ些細な技術的問題であっても、それが誤解を招く形で伝えられると、不必要な緊急手続きを引き起こす可能性があることを示しています。パイロットと管制官間の明確かつ正確な情報伝達が、安全で効率的な運航の基盤となります。