コロラド大学ボールダー校、消滅危機のアラパホ語復興へ取り組みを加速:長老の知恵をデジタル化し次世代へ
編集者: Vera Mo
グレートプレーンズを起源とするアラパホ語は、母語話者の減少と歴史的経緯により、消滅の瀬戸際に立たされている。このアルゴンキン語族の言語は、主にワイオミング州ウィンドリバー居留地の北部アラパホ族によって話されているが、南部話者はさらに少なく高齢者に限られる。現在、世界でアラパホ語を流暢に話す人数は250人から1000人程度と推定されており、その大半が60歳以上である。
コロラド大学ボールダー校(CU Boulder)先住民・インディアン研究センター(CNAIS)のディレクターであるアンドリュー・コーウェル教授は、2003年以来、この言語の記録と再生に向けた活動を主導している。コーウェル教授らのアラパホ語プロジェクトは、言語復興と教育を目的とした包括的な語彙データベースの構築を目指している。この取り組みは、国立科学財団(NSF)や国立人文科学基金(NEH)からの支援を受けており、NEHからの助成金は、データベースの拡張や、話者による言語使用の記録、さらには機械学習をサポート可能な規模でのデータ整備に充てられている。
この活動の核心は、単なる語彙の保存に留まらない。コーウェル教授らのチームは、ワイオミング州やオクラホマ州の居留地で長老たちの口述歴史を記録している。これには、グレート・デプレッションやダスト・ボウル、第二次世界大戦中のアラパホ族の生活様式、遊牧生活から牧場主や農家への移行といった部族の歴史的背景が含まれる。これらは教科書には記されない、彼らの世界観を映し出す貴重な資料となっている。
さらに、CUボルダーの「Right Relationship Boulder」は、2024年と2025年にヒノノオエイ語と文化キャンプへの資金提供を実施した。このキャンプでは若者に対し、言語レッスンと文化活動が無料で提供され、現代生活への言語の適応も試みられている。例えば、長老たちは「Facebook」を「ゴシップ」、「インターネット」を「全てがつながっている」といった現代的な意味を込めた造語を生み出している。ワイオミング大学のアメリカ遺産センターも、ザデネク・サルツマン・アラパホ・インディアン研究論文集などの資料保存を通じて、この活動を支援している。
デジタル技術の活用は、言語学習をより身近なものにし、特に公式なクラスや高齢の流暢な話者にアクセスしにくい18歳から35歳の世代にとって、アイデンティティを再確認する重要な手段となっている。この一連の活動は、失われゆく言語を救うという行為を超え、共同体が持つ独自の視点と知恵を未来へ繋ぐ、意識的な継承の現れである。
ソース元
Popular Science
Andrew Cowell | Center for Native American and Indigenous Studies
Revitalizing the Arapaho Language
Dreaming in Arapaho — reclaiming language and culture through the outdoors
Revitalizing Indigenous Languages at the Archive: The American Heritage Center and the Arapaho Language
Andrew Cowell | Center for Native American and Indigenous Studies
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