アラブ首長国連邦(UAE)の原子力エネルギー公社(ENEC)は、国内の原子力産業を担う次世代のリーダーを育成するための「卒業生プラントオペレーター(GPO)プログラム」を開始しました。この戦略的な取り組みは、UAEの原子力エネルギー分野における国内人材への投資と、将来のエネルギー供給の安定化に向けたENECの強い決意を示すものです。
工学系の学位を持つ優秀なUAEの卒業生を対象とするGPOプログラムは、原子力発電所の運営に不可欠な包括的な知識と実践的な経験を提供します。参加者はまず、バラカ原子力発電所(Barakah Nuclear Energy Plant)で現地オペレーターとして実務研修を受け、プラントの運用システムに関する深い理解を培います。その後、3年間の研修を経て、プラントの安全な運用、保守、試験を担当する重要な役割である上級原子炉オペレーター(SRO)のトレーニングへと進みます。
ENECのモハメド・イブラヒム・アル・ハマディ最高経営責任者(CEO)は、このプログラムを「人的資本への戦略的投資」と位置づけ、「今日の卒業生に力を与えることで、UAEのクリーンエネルギーの遺産を築き、バラカ発電所が最高の安全・セキュリティ・効率の基準で運営されることを保証する」と述べています。原子力エネルギーは、エネルギー安全保障と持続可能性において極めて重要な役割を果たすだけでなく、原子力発電所のライフサイクルを考慮すると、今後少なくとも100年以上にわたり高付加価値のキャリアを提供する分野であり、長期的な雇用の安定をもたらします。
GPOプログラムは、ENECがこれまで実施してきた卒業生開発プログラム(GDP)や奨学金制度、原子力技術ディプロマ(DNT)などの教育・研修イニシアチブを補完するものです。これらのプログラムを通じて、すでに1,000人以上のアラブ首長国連邦の才能ある人材が育成されており、バラカ発電所の長期的な運営を支える強固な国内労働力の基盤が築かれています。
バラカ原子力発電所は、アラブ世界初の商業原子力発電所であり、4基のAPR-1400原子炉を備え、総出力は5,600メガワット(MW)です。ENECは、この発電所の60年間の運用期間とその先を見据え、熟練した労働力の確保を通じて、UAEのクリーンエネルギー目標の達成を支援しています。同発電所は、年間最大2,240万トンの二酸化炭素排出削減に貢献しており、これはUAEの道路から年間480万台の自動車を排除するのに相当します。UAEのエネルギー戦略2050では、2030年までに総エネルギーミックスにおけるクリーンエネルギーの割合を30%に引き上げ、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しており、原子力はその重要な柱の一つとなっています。