2025年8月12日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利を0.25パーセントポイント引き下げ、3.6%としました。これは今年3度目の利下げとなり、金利は2023年4月以来の水準に戻りました。RBA総裁のミシェル・ブロック氏は、経済予測次第ではさらなる利下げの可能性を示唆しました。
利下げにもかかわらず、RBAは同国の生産性に関して深刻な懸念を表明しました。銀行は、将来の生産性成長率の予測を年率約1%から0.7%へと「大幅に引き下げ」ました。この見直しは、インフレ圧力を発生させることなく達成可能な賃金上昇率が、以前の予測よりも低いことを示唆しています。オーストラリアの生産性成長率は過去10年間停滞しており、これは生活水準と実質賃金の伸びを抑制する要因となっています。特に、2022年6月四半期には労働生産性が45年ぶりの大幅な落ち込みを記録しました。
財務大臣のジム・チャルマーズ氏は、生産性の課題に取り組む政府の決意を強調し、「非常に深刻な課題」であり、「経済戦略の中心にある」と述べました。ブロック総裁は、RBAが金利に影響を与えるものの、生産性の伸び悩みに対処することは主に政府の責任であると指摘しました。チャルマーズ大臣は、生産性の低迷は「資本深化」が進んでいないことや、スキルミスマッチ、経済のダイナミズム不足など、複数の要因に起因すると説明しています。
RBAが生産性成長率の予測を下方修正したことは、経済全体の成長見通しにも影響を与えています。2025年のGDP成長率予測は、従来の2.1%から1.7%に引き下げられました。これは、生産性の伸び悩みが経済の潜在成長率を低下させ、結果として家計所得や税収、政府支出にも影響を及ぼすという見方に基づいています。RBAは、生産性成長が実質賃金成長の主要な推進力であると認識しており、生産性の低迷は持続可能な経済発展にとって大きな障害となっています。
メディア各社もRBAの生産性への懸念を大きく取り上げており、『シドニー・モーニング・ヘラルド』や『オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー』などの報道は、この問題に対する銀行の懸念を強調しています。RBAの決定は、金融政策と生産性成長の複雑な相互作用を浮き彫りにし、政策立案者が持続可能な経済発展を促進する上での課題を示しています。政府は、2025年8月に開催される経済改革円卓会議を通じて、この生産性の課題に取り組むための具体的な方策を模索する予定です。