米、カリブ海で「サザン・スピア作戦」開始 ベネズエラは全国的な軍事動員で対抗

2025年11月上旬、米国防長官ピート・ヘグセット氏は、カリブ海地域における麻薬テロリズムを標的とした軍事行動「作戦サザン・スピア（Operation SOUTHERN SPEAR）」の開始を発表した。この作戦は、ドナルド・トランプ大統領の指示に基づき、米国本土防衛を名目として掲げている。この発表は、2025年11月14日時点で地域情勢が緊迫する中で行われ、米国は同地域での軍事プレゼンスを大幅に強化している。

作戦開始と同時に、世界最大級の航空母艦であるUSSジェラルド・R・フォードが同地域に到着した。この空母打撃群には、駆逐艦USSベインブリッジ、USSマハン、ミサイル防衛指揮艦USSウィンストン・S・チャーチルが随伴しており、約4,000人の水兵を擁する。既に同地域に展開していた約6,000人の米軍要員と合わせ、米軍の総兵力は約15,000人に達した。この軍事力の集中は、1989年のパナマ侵攻以来、同地域における最大の米軍プレゼンスであると指摘されている。

作戦の主要な対象の一つは、トランプ政権がテロ組織に指定したベネズエラ拠点のギャング「トレン・デ・アラグア」である。米国務省は2025年2月20日にトレン・デ・アラグアを含む8つのラテンアメリカの犯罪組織を「外国のテロ組織（FTO）」に指定しており、これにはMS-13やシ​​ナロア・カルテルも含まれる。米国防総省は、これらの組織を麻薬密売と結びついたテロリストと見なしている。

米国の軍事展開に対し、ベネズエラのマドゥロ政権は即座に強い反応を示した。ベネズエラ国防大臣ウラジーミル・パドリーノ・ロペス氏は、米国のプレゼンスを「帝国主義者の脅威」とみなし、陸海空、河川、ミサイル部隊を含む全国的な大規模軍事動員を発表した。この動員には約20万人の兵力が関与し、国の主権防衛を目的とした演習が実施されている。ベネズエラ側は、米国の行動が政権転覆を企図したものと結論付けており、緊張は極度に高まっている。

作戦サザン・スピアは、従来の海軍作戦を補完する技術的側面も特徴としている。これは、ロボット工学および自律システム（RAS）を統合する海軍のハイブリッド・フリート・キャンペーンの一環であり、長期間滞留可能な無人水上艇、小型ロボット迎撃艇、垂直離着陸型無人航空機を展開する。これらの無人システムは沿岸警備隊のカッターと連携し、違法な密輸活動の探知と監視を支援し、将来の海軍ドクトリンを形成するデータ収集を目的としている。作戦の指揮は、米南方軍（SOUTHCOM）と合同タスクフォース・サザン・スピアが担い、後者はフロリダ州メイポート海軍基地に司令部を置いている。

この軍事的な緊張の高まりは、9月上旬に始まった米軍による海上での連続的な臨検・攻撃と関連している。11月14日までに、米軍はカリブ海と太平洋で約20隻の船舶を攻撃し、少なくとも76人から80人の死者が出ていると報告されている。ベネズエラ政府は、これらの攻撃が不当なものであり、手続きなしの殺害であると非難している。この軍事的なエスカレーションは、地域情勢の不安定化を招く可能性があり、今後の展開が注視されている。