中国の月着陸船「藍月(ランユエ)」は、2025年8月6日に中国北部、河北省懐来県にある月面着陸実験基地で、模擬月面環境下での包括的な着陸・離陸試験を成功裏に完了しました。この試験は、中国初の地球外天体への有人宇宙船としての試験であり、同国の有人月探査計画における重要な一歩となります。
試験では、「藍月」モジュールの構造設計、制御戦略、月面着陸時の自動停止手順、誘導・航法・制御(GNC)や推進システムといった基本サブシステムの統合などが検証されました。これらの検証は、将来の月面ミッションにおける着陸船の信頼性と安全性を確保するために不可欠です。中国は2030年までに初の有人月面ミッションを実施することを目指しており、今回の「藍月」の成功は、その目標達成に向けた確実な進歩を示しています。この計画では、2基の大型ロケット「長征10号」を使用して、有人宇宙船「孟舟(モンジョウ)」と月着陸船「藍月」を月周回軌道に投入し、宇宙飛行士が月面へ降下する予定です。月面では「探索(タンスオ)」と名付けられた月面探査車を操作して科学調査を行うことが計画されています。
この取り組みは、中国が宇宙大国としての地位を確立し、宇宙開発競争における中国の存在感を高めるものです。1972年のアポロ17号以来、人類が月面に降り立ってから半世紀以上が経過しましたが、中国の着実な進歩は、再び人類が月を目指す新たな時代の幕開けを告げています。今回の「藍月」モジュールの成功は、中国の宇宙開発能力の向上を具体的に示し、国際宇宙探査の新たな局面を切り開くものと言えるでしょう。