米国務省は2025年8月16日、ガザ地区からの訪問ビザ発給を全面的に一時停止すると発表しました。これは、最近数日間で発給された少数の医療・人道支援ビザに関する手続きの、包括的な見直しが行われていることを受けての措置です。
この決定は、極右活動家ローラ・ルーマー氏がソーシャルメディア上で、非営利団体「Heal Palestine」を通じてパレスチナ難民が米国に入国していると主張し、これを国家安全保障上の脅威だと非難したことが引き金となりました。「Heal Palestine」はガザから148人を避難させ、そのうち63人は負傷した子供たちです。彼らは米国内の複数の都市で治療を受けています。米国は今年、パレスチナ自治政府の渡航文書所持者に対し、医療目的での滞在を認めるB1/B2ビザを3,800件以上発給しており、5月だけでも640件に上ります。今回の見直しは、こうしたビザ発給プロセスに焦点を当てています。
このビザ発給の一時停止は、親パレスチナ派団体や人道支援団体から強い批判を受けています。イスラム系米国人コミュニティ(CAIR)の副事務局長エドワード・アーメド・ミッチェル氏は、この措置を「純粋な残酷さ」と非難し、「より多くの子供たちの命を危険にさらすことになる」と指摘しています。パレスチナ子供救援基金(PCRF)もまた、ガザで負傷し重症を負った子供たちが米国で不可欠な医療を受ける機会を奪う可能性があると警告を発しています。PCRFは30年以上にわたり、医療ケアを必要とするパレスチナの子供たちを米国へ避難させる活動を行っています。
この決定は、2023年10月の紛争開始以降、61,000人を超えるパレスチナ人が犠牲になったとされるガザ地区の状況に対する国際的な懸念が深まる中で下されました。国連は、深刻な人道危機、広範な飢餓、栄養失調について警鐘を鳴らしています。米国務省は、ガザ住民向けの医療・人道支援ビザ発給手続きの見直しがいつ完了するかについては、現時点で明言していません。