2025年8月31日から9月1日にかけて中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議は、世界のガバナンス構造に新たな視点を提示し、より公平で多極的な世界秩序の構築に向けた重要な一歩となった。習近平国家主席とウラジーミル・プーチン大統領をはじめとする指導者たちは、既存の国際秩序への挑戦と、地域および世界の平和と安定の維持に向けた協力の強化を訴えた。
会議では、より公平なグローバル・ガバナンスの必要性が強調された。習近平主席は「冷戦思考」や「いじめ行為」を批判し、「上海精神」に基づく新たな多国間主義モデルを推進した。プーチン大統領もこのイニシアチブを支持し、一部の国による「国際政治における独裁」への試みに言及し、より効果的なグローバル・ガバナンスシステムの重要性を共有した。
SCOは、従来の地域安全保障中心の枠組みから、経済、技術、社会的なパートナーシップを含む広範な協力へとその責務を拡大することを決定した。今後10年間の発展戦略が承認され、組織の成長方向が示されるとともに、ラオスがパートナーとして受け入れられるなど、SCOは27カ国からなる家族へと拡大した。
会議の重要な成果の一つとして、SCO開発銀行の設立が加速されることが発表され、中国は今後3年間で14億ドルの融資を約束した。これは、地域内のインフラ開発と経済・社会の進歩を大きく後押しする具体的な金融支援となる。さらに、中国はSCO加盟国に対し、米国が管理するGPSシステムに代わるものとして、自国の北斗衛星測位システムへのアクセスを開放することを提案した。これは、戦略的な技術的選択肢を模索し、国際的な技術インフラにおける依存度を低減させる動きとして注目される。
これらの動きは、米国一極集中から多極化へと進む世界的な地政学的シフトと連動している。専門家は、SCOやBRICSのような枠組みが、米国の支配に挑戦し、より分散化された国際システムを形成していると分析している。ロシアで開催された東方経済フォーラムの「平和と繁栄のための協力」というテーマも、SCOの目標と呼応するものであり、ユーラシア地域における新たな発展とガバナンスモデルの模索を示唆している。
天津でのSCO首脳会議は、多極化世界秩序への移行を加速させる重要な一歩となった。経済、技術、社会分野での協力拡大は、SCOが21世紀の国際協力において、より公正で安定した世界の実現に向けた中心的な役割を果たす可能性を示唆している。