ペンシルバニア大学の研究者たちは、構造性能を向上させ、二酸化炭素(CO₂)吸収能力を高める革新的な3Dプリントコンクリートを開発しました。この新素材は、珪藻土と、サンゴや骨のような自然界に見られる構造に着想を得た三次元周期極小曲面(TPMS)構造を組み合わせています。この組み合わせにより、従来のコンクリートと比較して、構造的な強度を維持しながらCO₂吸収量を大幅に増加させることが可能になりました。
従来のコンクリート製造は、世界の温室効果ガス排出量の約8%を占めており、環境への影響が懸念されています。この新しいコンクリートは、珪藻土の多孔質でスポンジ状の構造がCO₂を効果的に捕捉し、硬化プロセス中に炭酸カルシウムを形成することで強度を高めます。研究によると、このコンクリートは標準的な配合よりも最大142%多くのCO₂を吸収し、セメントの使用量を削減しながらも、従来のコンクリートと同等以上の強度基準を満たしています。さらに、TPMS構造を採用することで、材料の使用量を約68%削減しつつ、表面積対体積比を500%以上向上させることに成功しました。TPMS構造を持つコンクリートキューブは、従来のソリッドバージョンと比較して圧縮強度の90%を維持し、セメント単位あたりのCO₂吸収量を32%向上させました。
この技術は、建築分野における持続可能性への取り組みを大きく前進させるものです。研究チームは現在、床、ファサード、支持パネルなどのフルスケール構造要素への技術の応用拡大に取り組んでいます。また、その多孔性と環境適合性から、人工礁のような海洋インフラへの応用も検討されています。珪藻土をベースとしたこのコンクリートは、海洋生物が付着・成長しやすい表面を提供し、周囲の水から受動的にCO₂を吸収する可能性があります。
この革新的な材料は、建設業界における環境負荷の低減と、気候変動対策への貢献が期待されています。研究者たちは、より少ない材料でより高い性能を発揮する建築材料の開発を通じて、持続可能な未来の構築を目指しています。この研究は、材料科学とエンジニアリングの分野における重要な進歩であり、建設業界が直面する環境課題に対する具体的な解決策を提示するものです。