欧州連合、2025年10月12日開始の電子入出国システム(EES)導入で国境管理を刷新

編集者: Татьяна Гуринович

欧州連合(EU)は、2025年10月12日を期して、シェンゲン協定域への出入国管理を根本から変革する電子入出国システム(EES: Entry/Exit System)の段階的導入に着手します。この自動化された枠組みは、非EU市民の入域と退去の記録をデジタル化し、国境管理の精度と安全性を高めることを目的としています。EESは、EU委員会が主導し、シェンゲン協定加盟国(スイス、アイスランド、ノルウェーを含む29カ国、南キプロスとアイルランドを除く)の国境検問所(空港、港湾、陸路)で順次展開されます。この導入は一斉ではなく、2026年4月10日までに全地点での完全稼働を目指す段階的なスケジュールが組まれています。

EESの核心は、従来のパスポートへのスタンプ押印を廃止し、代わりに生体認証データ、すなわち顔画像と指紋を収集・登録することにあります。初回入国時には4本の指紋が採取される見込みです。このデータは、氏名や生年月日、旅券番号といった基本情報と共に中央データベースに記録され、域内での滞在期間の管理を徹底します。非EU市民は、引き続き「あらゆる180日間の期間内で最大90日間」の滞在ルールに従いますが、EESがこの日数を自動的に計算し、オーバーステイの防止に貢献します。収集されたデータは原則として3年間保管され、期間内の再入国時には新たな登録手続きは不要となります。

この大規模なデジタル化は、国境管理の効率化とセキュリティ強化という明確な意図を持っています。EU側は、EESにより不法な国境越えや滞在期間の超過を減らし、テロ対策や重大犯罪捜査における情報アクセスを向上させると見ています。旅行者にとっては、長期的には手続きの迅速化が期待されるものの、導入初期には、初めてシステムを利用する際のキオスク端末での登録作業により、一時的に国境での待ち時間が増加する可能性が指摘されています。渡航者には、入国審査官から帰国便の航空券や宿泊証明書の提示を求められる場合があるため、事前の準備が重要です。

EESは、欧州渡航情報認証制度(ETIAS)と連携して機能する、より強固なデジタル国境管理戦略の一部です。ETIASが渡航前の事前審査を担うのに対し、EESは実際の物理的な出入域を記録する役割を担います。ETIASの導入は2026年後半に見込まれており、この二層構造の導入は、域内への出入り口における透明性を高め、個々の旅程が明確に把握される未来への移行を示唆しています。旅行者一人ひとりが、自らの移動の記録と責任を意識することが求められる時代が到来しました。

ソース元

  • En Son Haber

  • eu-LISA

  • European Commission

  • VisitorsCoverage

  • SchengenVisaInfo

  • European Parliament

エラーや不正確な情報を見つけましたか?

できるだけ早くコメントを考慮します。