2025年7月に締結されたEUと米国の新たな貿易協定は、ほとんどのEUからの輸入品に15％の関税を課すことで、貿易戦争の回避とビジネスの安定化を目指しています。この協定はブルガリア経済に限定的な影響を与えると予想されていますが、同国のサービス部門は引き続き経済の重要な柱となっています。2023年のブルガリアの総輸出額は869億レフ（前年比6.5％減）であり、米国への財輸出による付加価値は約8億3000万ユーロで、ブルガリア経済全体の付加価値の1％に過ぎませんでした。一方、サービス輸出による付加価値は2023年に19億4000万ユーロに達し、ブルガリア経済全体の付加価値の2.3％を占めており、サービス部門が経済の安定に大きく貢献していることを示しています。
市場経済研究所（IME）の分析によると、ブルガリアの財輸出に対する関税の影響は限定的ですが、主要なEU貿易相手国への間接的な影響は避けられない可能性があります。鉄鋼やアルミニウムなどの特定セクターは、すでに適用されている50％の関税率により脆弱であると指摘されています。ブルガリア政府は、輸出クォータの確保を通じてこれらの影響を緩和しようとしています。政府はまた、南米、インド、オーストラリアなどとの新たな貿易協定交渉を進め、米国市場への依存度を減らし、輸出の安定性を高める市場多角化戦略に焦点を当てています。特に、IT、製薬、製造業などの高付加価値セクターへの投資促進とグローバルサプライチェーンへの統合強化が、ブルガリアの経済的競争力を高める鍵となります。
ブルガリアのサービス部門はEU全体のトレンドを上回る成長を示しており、経済の強靭性を支えています。観光業やITセクターはブルガリア経済の成長を牽引する重要な分野です。この貿易協定はブルガリア経済全体に大きな混乱をもたらすものではありませんが、輸出業者にとっては新たな市場開拓やサプライチェーン再構築の機会となります。ブルガリアはEUとの連携を深めつつ、グローバルな経済環境の変化に柔軟に対応していくことが重要です。