2025年9月11日、欧州司法裁判所は、パクス原子力発電所の拡張計画に対する欧州委員会のハンガリーへの国家補助承認を無効とする判決を下しました。このプロジェクトにはロシアのニジニ・ノヴゴロド・エンジニアリングが関与しています。
裁判所は、欧州委員会が契約がEUの調達規則を遵守しているかを確認していなかったと判断しました。この決定は、主にロシアの国家融資によって資金提供され、ハンガリーとロシア間の平和的原子力協力協定の一部であるプロジェクトに影響を与えます。オーストリアは以前からこの補助金に異議を唱えており、2018年にEU一般裁判所で当初敗訴しましたが、欧州司法裁判所への上訴で勝訴しました。この上訴は、契約がEUの調達法に準拠しているかを確認する必要性を強調したものでした。
パクス原子力発電所は、ソ連時代の設計に基づき、現在4基のVVER-440原子炉が稼働していますが、その運転寿命は2032年から2037年の間に終了する予定です。ハンガリーは、この発電所をロシア製のVVER原子炉2基で拡張する計画を進めており、各原子炉の容量は1.2ギガワットです。この建設プロジェクトは2014年に公開入札なしでロスアトムに発注され、その後遅延が生じています。
欧州司法裁判所の判決は、欧州委員会が補助金の適法性だけでなく、公開入札手続きを経ずにロシアの企業に建設契約を直接発注したことがEUの公共調達規則に適合するかどうかを確認すべきであったことを示しています。裁判所は、欧州委員会の決定には十分な根拠が欠けていたと指摘しました。
この判決により、パクス原子力発電所の拡張プロジェクトの将来は不確実なものとなりました。ハンガリー政府は、プロジェクトを計画通りに進める用意があるとしつつも、欧州委員会と協力して公共調達および国家補助の要件を満たしていることを証明する用意があると述べています。一方、グリーンピースは、この判決を画期的なものと呼び、欧州委員会に対し、パクスIIへの国家補助承認を取り下げるよう求めています。これは、EUの制裁の実効性を損ない、ロシアがウクライナとの戦争を継続しながらハンガリーの納税者の資金から利益を得ることを可能にすると主張しています。ハンガリーは、ロシアのエネルギー源への依存度を減らすというEUの目標から程遠い状況にあり、このプロジェクトの行方が注目されます。