国連総会は、人工知能（AI）の恩恵を最大化し、リスクを軽減するための新たな国際的イニシアチブとして、「国連独立国際科学パネル（UN Independent International Scientific Panel on AI）」と「AIガバナンスに関するグローバル対話（Global Dialogue on AI Governance）」を始動しました。これらの取り組みは、2024年9月に採択された「未来のための包括的協定（Pact for the Future）」の一部である「グローバル・デジタル・コンパクト（Global Digital Compact）」に基づいています。このコンパクトは、AIガバナンスに関する初の普遍的な合意枠組みとして、国際社会がAIの発展を責任ある形で導くための基盤を築くものです。
独立国際科学パネルは、AIの政策決定を支援するための独立した科学的評価を提供し、将来の課題予測に貢献します。最先端のAI研究と政策立案の間の架け橋となり、客観的な科学的分析を通じてAIの機会、リスク、影響に関する理解を深めることを目指します。パネルは、IPCC（気候変動に関する政府間パネル）を参考に、グローバルサウスの代表性を重視した運営が模索されています。一方、グローバル対話は、各国政府および全ての関係者がAIの人類への影響について議論するためのプラットフォームを提供し、国際的なガバナンスの調和と人権保護の強化を目指します。この対話は、2026年7月にジュネーブ、2027年7月にニューヨークで開催される年次総会で、科学パネルの年次報告が発表される場ともなります。
国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、これらのイニシアチブへの支援を訴え、公平なデジタルインフラと人材育成の必要性を強調しました。同氏は、AIの「持つ者」と「持たざる者」との間の格差が不安定さを生み出すと警告し、AIの恩恵が一部の国や企業に集中せず、全ての国、特にグローバルサウスが発展とガバナンスに公平に参加できることの重要性を訴えています。ARTICLE 19のような組織は、これらのイニシアチブが人権、包摂性、透明性、そしてAIの深刻なリスクへの対応に基づいているべきだと提言しており、AIのライフサイクル全体を通じて人権を保護し、表現の自由や差別の禁止といった原則がAIの設計、開発、展開のあらゆる段階で組み込まれることを求めています。
これらの新たな体制の設立は、急速に進化するAI技術を人類全体の幸福のために活用し、潜在的なリスクを効果的に管理するための、国際社会による協調的かつ包括的な取り組みの重要な一歩です。これは、技術の進歩を単なる効率化や経済的利益の追求にとどめず、より公平で、理解に基づいた、そして調和のとれた未来を築くための機会として捉え直すことを促すものです。