ロシアとベラルーシは、2025年9月12日から16日まで、両国およびバルト海、バレンツ海で共同軍事演習「ザパド2025」を開始しました。この演習は、両国の「同盟国家」としての防衛能力、特に敵の攻撃を撃退し国境を確保する準備を試すことを目的としています。しかし、この演習は地域における緊張を高めており、NATO(北大西洋条約機構)諸国は警戒を強めています。
今回のザパド2025演習には、約7,000人から8,000人の兵力が参加すると見られています。これは、2021年のザパド演習で約20万人が参加したのと比較すると大幅な縮小です。ロシアとベラルーシは、演習が防御的なものであり、特定の国を標的としたものではないと主張していますが、近隣諸国は懸念を表明しています。
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、この演習を「非常に攻撃的」と表現し、ポーランド国境に非常に近い場所で行われると指摘しました。また、最近ポーランド領空へのロシア製ドローンの侵入事件を受け、ポーランドはベラルーシとの国境を閉鎖しました。このドローン事件は、NATOによるロシアに対する直接的な軍事介入としては、2022年のウクライナ侵攻以来初めてのことでした。トゥスク首相は、この侵入は偶然ではなく、ロシアによる意図的な挑発であると強く非難しています。
英国のジョン・ヒーリー国防長官は、ポーランドの防衛能力強化に向けた支援策を検討するよう英国軍に指示したことを明らかにしました。これは、欧州における新たな脅威の時代に対応し、ロシアの攻撃的な行動に対するNATOの団結と決意を示すものです。欧州各国も、ポーランドの防空能力を強化するために、追加の戦闘機を派遣するなど、連携した対応を進めています。
NATOは、ロシアとベラルーシの軍事演習に対抗する形で、独自の「イースタン・セントリ」演習を開始しました。この演習には、ポーランド、リトアニア、ラトビアなどのNATO加盟国が参加し、地域全体の安全保障と抑止力の強化を図っています。これらの動きは、欧州における地政学的な緊張が依然として高いレベルにあることを示しています。ザパド2025演習は、ロシアとベラルーシの軍事協力の重要な指標であると同時に、地域全体の安定に対する潜在的な影響についても注視されています。