2025年9月6日、英国の首都ロンドン中心部で、政府によりテロ組織に指定された「パレスチナ・アクション(Palestine Action)」を支持する大規模な抗議デモが発生し、警察はテロリズム法に基づき400人を超える参加者を逮捕しました。このデモは、英国議会議事堂前で行われ、約1,500人が参加したとみられています。参加者らは「ジェノサイドに反対する。パレスチナ・アクションを支持する」と記されたプラカードを掲げ、政府による同団体への禁止措置に異議を唱えました。
パレスチナ・アクションは2020年に設立されたパレスチナ支持の直接行動グループで、英国の軍需産業、特にイスラエルとの関連が指摘される企業を標的とした活動を展開してきました。今年6月、同グループの活動家がRAFブリズ・ノートン基地に侵入し、軍用輸送機2機にペンキを塗布して約700万ポンドの損害を与えたとされています。この事件を受け、英国政府は7月5日、パレスチナ・アクションをテロリズム法に基づきテロ組織として指定しました。これにより、同グループへの支持表明や所属は犯罪行為とみなされ、最大で禁錮14年の刑罰が科される可能性があります。
主催者である「デフェンド・アワ・ジュリーズ(Defend Our Juries)」は、警察がデモ参加者に対して「例外的なレベルの虐待」を行ったと主張しています。一方、警察側は参加者からの「パンチ、キック、唾吐き、物の投げつけ」といった行為を「許容できない」と非難しました。警察発表によると、土曜日のデモで逮捕された人数は425人を超え、そのうち25人以上が警察官への暴行や公共秩序違反の容疑で、残りはテロリズム法に基づき逮捕されました。一部報道では、逮捕者総数が800人を超えるとも伝えられています。
この一連の出来事は、英国における抗議活動の権利に対する懸念を広げています。国連人権高等弁務官事務所やアムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、パレスチナ・アクションの指定やそれに伴う大規模な逮捕について、表現の自由や平和的抗議の権利を不当に制限するものであり、「テロリズムと抗議活動の混同」であると強く批判しています。テロリズム法が、本来テロ行為とは異なる政治的抗議活動に適用されることへの懸念は、市民的自由への「冷え込んだ影響(chilling effect)」をもたらす可能性が指摘されています。
パレスチナ・アクション側は、この禁止令に対して法的異議申し立てを行っており、今後の司法の判断が注目されています。今回のロンドンでの大規模な逮捕劇は、英国社会が直面する国家安全保障の維持と、多様な意見表明を保障する民主主義の原則との間で、いかに調和を図るかという問いを改めて突きつけています。