イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相は、欧州主要国との間でウラン濃縮の制限と厳格な監視を条件とした核合意の交渉に応じる用意があることを示しました。この声明は、米国が2015年の核合意から離脱した後に欧州諸国が科した制裁の再発動という、緊張が高まる状況下で発表されました。
アラグチ外相はガーディアン紙への寄稿で、欧州3カ国（E3）が国連制裁の「スナップバック」手続きを発動したことは法的根拠を欠き、米国の戦略に盲従する「重大な誤算」であると批判しました。同外相は、欧州が自らの義務を果たさず、イランの核施設に対するイスラエルの軍事攻撃を非難しなかったことを指摘し、このような受動性が欧州を地域外交からさらに疎外させると警告しました。イランは対話に前向きであるものの、厳格な監視と制裁解除を前提条件としています。
一方、イラン国内ではイスラエル国家の破壊を目標とする声明や、核兵器開発を進めているとの国民への説明も同時に行われており、外交的な動きと国内の政治的メッセージとの間に複雑な様相を呈しています。国際原子力機関（IAEA）の報告によると、2025年6月13日時点でイランは60%に濃縮されたウランを440.9キログラム保有しており、これは兵器級に近づくレベルです。6月のイスラエルと米国によるイラン核施設への攻撃が、このプログラムにどの程度影響を与えたかは依然として不明確ですが、IAEAはイランに対し、査察の再開に関する合意を急ぐよう求めています。
この状況に対し、中国とロシアは欧州による制裁再発動に反対し、その法的・政治的な妥当性に疑問を呈しています。イスラエルは、イランの核武装を自国の存亡に関わる脅威と見なし、過去の軍事行動を正当化しています。このような地政学的な緊張の中で、アラグチ外相は、外交の機会を逃せば「地域および国際社会に前例のない破壊的な結果」をもたらすと警告を発しました。
この局面は、対立の応酬を超え、より深い理解と建設的な未来への道を探る機会とも言えます。各国の行動が相互に影響し合う中で、対話を通じて共通の安定を目指す道筋を見出すことが、地域全体の調和と進歩にとって不可欠となるでしょう。外交的な解決への努力は、複雑な現実の中で、より賢明な選択肢を模索する機会を提供します。