米国は、ウクライナに対し、8億5,000万ドル規模の軍事援助パッケージの一環として、長距離攻撃弾薬（ERAM）ミサイル3,350発の供与を承認しました。このパッケージの大部分は欧州諸国からの資金提供を受けています。
しかし、米国防総省は審査プロセスを導入しており、これにより国防長官がウクライナによるロシア領内への長距離米国製兵器の使用を阻止する権限を持つことになります。この制限は、以前にもATACMSミサイルのロシア領内への使用を阻止するために用いられてきました。
ERAMミサイルは、射程が240キロメートルから450キロメートルに及び、迅速かつ低コストで生産可能な兵器として設計されています。これらのミサイルは、約6週間後にウクライナに到着する見込みです。
この供与決定は、8月15日にアラスカで行われたトランプ大統領とロシアのプーチン大統領との会談、およびその後のホワイトハウスでのゼレンスキー大統領との会談を経て行われました。トランプ大統領は、3年間続くこの戦争と和平合意の仲介に失敗したことへの不満を募らせており、8月21日には「ロシアを攻撃できなければウクライナに勝利のチャンスはない」と述べ、前政権がウクライナの反攻能力ではなく防衛能力のみを支援していたと批判しました。
米国防総省の審査プロセスは、ウクライナがこれらの長距離兵器をロシア領内の標的に使用する際の戦略的な展開を米国が管理していることを示唆しています。この方針は、ウクライナの軍事行動を制約する一方で、ホワイトハウスがクレムリンを和平交渉に引き込もうとする試みと関連しています。
欧州諸国からの資金援助を含むこのパッケージは、トランプ大統領がロシアのプーチン大統領およびウクライナのゼレンスキー大統領と会談するまで延期されていました。ウクライナは、安全保障上の保証の一環として、900億ドル相当の米国製兵器の購入を提案しています。
ERAMミサイルは、巡航ミサイルと爆弾のハイブリッドであり、その射程は400キロメートルを超え、ウクライナの航空戦力に既存の空対地兵器では届かない目標を攻撃する新たな能力をもたらします。これにより、ウクライナはロシア領内の軍事施設、補給ルート、鉄道インフラなどを標的にすることが可能になります。しかし、ロシア領内への攻撃には依然として国防総省の承認が必要となる可能性があり、その運用は制限される可能性があります。この状況は、米国がウクライナを支援しつつ、ロシアとのエスカレーションを管理しようとする複雑なバランスを示しています。ウクライナの国防能力を強化するという米国の継続的なコミットメントを示す一方で、ロシア領内への攻撃能力に対する厳格な使用制限は、この支援パッケージの効果を大きく左右する可能性があります。