2025年10月6日、ジョージアの検察当局は、10月6日に首都トビリシで発生した大規模な抗議デモに関連し、野党指導者5名に対し、政府転覆未遂の容疑で訴追したことを発表しました。この動きは、同月4日に行われた地方選挙のボイコットや、与党「ジョージアの夢」の政策、特にその親ロシア的と見なされる傾向に対する国民の不満が背景にあります。この事態は、ジョージアが直面する地政学的なジレンマと、国民が求める国の進むべき道筋を巡る深い探求を浮き彫りにしています。
訴追されたのは、オペラ歌手で活動家のパアタ・ブルチュラーゼ氏、ムルタズ・ゾデラヴァ氏、イラクリ・ナディラゼ氏、パアタ・マンジャラゼ氏、ラシャ・ベリゼ氏の5名です。彼らは、10月4日の地方選挙を野党主要ブロックがボイコットする中で行われた抗議デモの組織に関与したとされています。デモには数千人が参加し、一部は大統領宮殿への侵入を試みましたが、治安部隊によって鎮圧されました。検察当局は、これらの行為が憲法秩序の暴力的な変更や国家権力の転覆を企てたものと見ており、最大で懲役9年の刑罰が科される可能性があります。これは、単なる政治的対立を超え、国家の安定と秩序に対する挑戦と見なされています。
この事件の根底には、長年にわたる「ジョージアの夢」党と野党勢力との間の深い亀裂が存在します。野党側は、与党が権威主義的な傾向を強め、欧米志向からロシアへと舵を切っていると非難しています。特に、2012年から事実上ジョージアを率いるとされるビジナ・イヴァニシヴィリ氏（「ジョージアの夢」党創設者）は、2024年末から2025年初頭にかけて、民主主義の侵害とロシアの影響力拡大を理由に米国から制裁を受けており、その影響力は依然として大きいと見られています。このような状況下で、2024年10月の国会議員選挙では「ジョージアの夢」党が勝利しましたが、野党は不正選挙を主張し、政治的緊張は続いていました。
さらに、ジョージアの欧州連合（EU）加盟への道のりも、複雑な様相を呈しています。2023年12月にEU候補国としての地位を獲得したものの、2024年11月には「ジョージアの夢」党政権がEU加盟交渉のプロセスを2028年まで凍結すると発表しました。この決定は、国民の多くが望む欧州統合への強い願望とは裏腹であり、国内で新たな抗議活動を呼び起こす要因ともなりました。ジョージアは、西側諸国との連携を深めたいという国民の願いと、歴史的な関係や地政学的な現実との間で、常に繊細な均衡を保つことを求められています。
今回の訴追は、ジョージアが現在直面している、国内の政治的安定、民主主義の深化、そして国際社会における自国の立ち位置を巡る、より大きな問いかけの一部と言えるでしょう。国民の多様な願いが交錯する中で、国がどのような未来を選択していくのか、その行方が注目されます。表面的な対立の裏に潜む、より大きな変革の可能性と、国民一人ひとりが自らの未来を形作る上での責任が、今、問われています。