2025年8月31日、イエメンの首都サヌアにおいて、イランが支援するフーシ派勢力が国連関連機関、具体的には世界食糧計画（WFP）、世界保健機関（WHO）、ユニセフ（国連児童基金）の事務所を襲撃し、少なくとも11名の国連職員を拘束しました。この襲撃は、8月28日にフーシ派のアーメド・アル＝ラハウィ首相とその閣僚数名がイスラエル軍による空爆で死亡したとされる事件に続くものです。
国連の事務総長は、この襲撃と職員拘束を強く非難し、全ての職員の即時かつ無条件の解放を要求しています。WFPもサヌア事務所が現地治安部隊に占拠され、職員が拘束されたことを確認しており、他の地域でも同様の拘束が報告されています。欧州連合（EU）もこの事態を非難し、人道支援活動への深刻な影響を懸念しています。
この事件は、イエメンにおける安全保障上の懸念がかつてないほど高まっている状況を示しています。国連は以前から、フーシ派支配地域での職員の安全確保に懸念を示しており、2025年2月には職員の安全確保のための調整期間として、フーシ派支配地域での活動を一時停止しました。2025年1月には、サアダ県で8名の職員が拘束されたことを受け、同地域での活動を停止した経緯があります。
イエメンでは、長引く紛争により、人口の半数以上が人道支援を必要とする深刻な状況が続いています。2025年1月現在、1700万人以上が食料不安に陥っており、そのうち約1000万人が急性食料不安に直面しています。今回のフーシ派による国連事務所への襲撃と職員拘束は、この脆弱な人道状況をさらに悪化させる可能性が指摘されています。
この一連の出来事は、フーシ派の動機、拘束の具体的な理由、そして進行中の人道支援活動への影響について多くの疑問を投げかけています。また、イランからの支援を受けているとされるフーシ派の行動の背景についても、国際社会の関心を集めています。2023年10月のガザ紛争勃発以降、フーシ派は紅海などで船舶への攻撃を繰り返しており、イスラエルとの対立が激化する中で、今回の事件は地域情勢のさらなる不安定化を招く懸念があります。2025年8月30日には、フーシ派はイスラエルへの攻撃を強化すると宣言しており、緊張は高まる一方です。