韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は8月15日、日本の植民地支配からの解放80周年記念演説において、2018年に北朝鮮と締結した包括的軍事合意(CMA)の回復に向けた意向を表明した。この合意は、両国間の国境地帯における緊張緩和を目的としていたが、前政権による一方的な停止と北朝鮮による無効化宣言を経て、事実上機能していなかった。李大統領は、敵対行為の継続は両国にとって不利益であると強調し、対話を通じた平和的な非核化へのコミットメントを示した。大統領は、北朝鮮の体制を尊重し、吸収統一を目指さないこと、そして敵対行為を行う意図がないことを改めて表明した。この動きは、6月に就任した李政権が、前政権とは対照的に、対話と緊張緩和を重視する姿勢を示したものだ。
包括的軍事合意は、2018年9月19日に当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の間で署名され、軍事境界線付近での砲撃演習や野外機動訓練の停止、飛行禁止区域の設定、非武装地帯(DMZ)沿いの監視所撤去など、具体的な緊張緩和措置が含まれていた。しかし、2023年11月に北朝鮮が偵察衛星を打ち上げたことを受け、韓国は合意の一部を停止し、北朝鮮もこれに反発して合意を事実上破棄した。その後、2024年6月には、北朝鮮による風船を使ったビラ散布などの挑発行為を受け、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が合意の完全停止を宣言した。李大統領は、偶発的な衝突を防ぎ、軍事的信頼を構築するために、包括的軍事合意の回復に向けて「積極的かつ段階的な措置」を講じると述べた。また、北朝鮮に対し、信頼回復と対話再開に向けた韓国の努力に応じるよう呼びかけた。今回の発表は、朝鮮半島の安定化に向けた重要な一歩と見なされているが、北朝鮮の反応は依然として不透明である。一方、李大統領は8月23日に予定されている日本の石破茂首相との会談にも言及し、両国関係の改善と協力強化に向けた意欲を示した。この会談は、歴史問題に対する日本の積極的な姿勢を促すとともに、地域全体の安定に寄与することが期待されている。韓国と日本の外交正常化60周年を迎える今年、過去の歴史を直視し、未来への賢明さを示すことが重要であると李大統領は強調した。