NASAのPUNCH(Polarimeter to Unify the Corona and Heliosphere)ミッションは、2025年3月11日の打ち上げ以来、太陽のコロナ(外層大気)とその太陽風への変遷を包括的に研究するという野心的な目標を掲げています。2025年8月7日までに、4機の衛星すべてが最終的な科学観測軌道に配置され、地球の昼夜境界線に沿って展開することで、太陽とその周辺環境を継続的かつ遮るものなく観測できるようになりました。この戦略的な配置により、太陽活動がどのように太陽系全体に影響を与えるかについての理解を深めることが期待されています。
PUNCHミッションは、4機のスーツケースサイズの衛星で構成され、それぞれに狭視野撮像器(NFI)と3基の広視野撮像器(WFI)が搭載されています。NFIはコロナグラフとして機能し、太陽の光を遮断してコロナの詳細を明らかにします。一方、WFIは内太陽系を伝播する太陽風の広範囲な画像を捉えます。これらの画像をモザイク状に組み合わせることで、PUNCHは太陽から地球までの宇宙天気現象を追跡することを目指しています。ミッションの初期段階では、PUNCHはすでにその能力を示す初期画像を公開しています。2025年4月27日には、観測機器の調整期間中に、月が太陽の上方に浮かぶ日食の画像を捉えました。このNFI画像は、遠方の星々を背景にした太陽コロナに焦点を当てる機器の能力を実証しています。さらに、2025年5月下旬から6月上旬にかけて、PUNCHの3基のWFIは、太陽から放出され太陽系内を移動するコロナ質量放出(CME)の観測に成功しました。これらの画像は、アラスカ州アンカレジで開催された米国天文学会第246回会議で発表され、CMEの理解を深める詳細な観測結果を提供しました。
PUNCHミッションは、NASAのパーカー・ソーラー・プローブ、STEREO、SOHO、およびNASA/ESAのソーラー・オービターといった他の太陽物理学ミッションと連携し、太陽のコロナと太陽風の全体像をより包括的に捉えることを目指しています。これらのミッションからのデータを統合することで、科学者たちは太陽現象とその宇宙天気への影響について、これまで以上に詳細な理解を得ることができます。PUNCHの2年間のミッションは、宇宙天気現象の発生と進化に関する貴重なデータを提供し、地球への到達予測とインフラへの影響評価の向上に貢献すると期待されています。PUNCHの初期処理済み画像は、NASAの太陽データ解析センターからダウンロード可能であり、データの詳細についてはサウスウェスト研究所のデータアクセスページで確認できます。このミッションは、太陽活動のダイナミクスを理解し、地球上の技術と生活を守るための重要な一歩となります。