量子インターネット構築へ大躍進:オーストラリアの研究者が地球から衛星への「アップリンク」の実現性を実証

編集者: Veronika Radoslavskaya

グローバルでハッキング不可能な量子インターネットの実現に向けた競争において、大きな一歩が踏み出されました。シドニー工科大学(UTS)の研究チームが、これまで技術的に困難とされてきた「量子アップリンク」の実現可能性をモデル化によって初めて証明したのです。これは、地球上から衛星に向けて脆弱な量子信号を直接送信するという画期的な手法です。この発見は、学術誌『Physical Review Research』に詳細が掲載されており、従来の量子通信の確立されたモデルを根底から覆し、より安価で拡張性の高い安全なグローバルネットワークへの道を開くものです。

長年にわたり、宇宙での量子通信、特に中国の「墨子(Micius)」衛星によって実証された手法は、「ダウンリンク」に依存していました。この方式では、軌道上の衛星がもつれ合った光子を生成し、それを地上にビームで送るため、衛星側には巨大で複雑、かつ電力消費の激しい装置が必要でした。しかし、UTSのサイモン・デビット教授とアレクサンダー・ソレンツェフ教授が主導したモデルは、この流れを逆転させます。彼らの解決策は、複雑で電力集約的なハードウェアをすべて安全な地上に留めるというものです。

潤沢な電力を利用できる地上局が量子信号を生成し、衛星は単にそれを受信する「レシーバー」としての役割を担います。これにより、衛星はシンプルで安価、そして軽量化されます。この設計変更は、量子通信のインフラストラクチャにおけるコストとサイズのボトルネックを解消する上で決定的な意味を持ち、実用化に向けた大きな障壁を取り除きます。

このアップリンク方式の実現には、長らく乗り越えられない課題があると見なされていました。それは、上空500 kmを時速20,000 kmで移動する小さな衛星に対し、異なる場所から発射された2つの光子を、大気中の歪みや地球からの背景光、さらには月面からの太陽光の反射といった現実世界の障害を考慮に入れながら、*完全に同時に*到着させて干渉させるという難題です。デビット教授は、この困難な挑戦に対し、「驚くべきことに、私たちのモデルはアップリンクが実現可能であることを示しました」と述べ、理論上克服されたことを強調しています。

このブレイクスルーは、安全な鍵交換に必要な少数の光子を扱う暗号技術のためだけにとどまりません。このアップリンク方式は、将来的に大陸をまたいで量子コンピューターを接続するために必要な高帯域幅を提供できる可能性があります。デビット教授は、「量子インターネットは全く異なる種類のものです」と説明し、「我々の手法は衛星をシンプルでコンパクトなユニットにすることで、コストとサイズを抑え、このアプローチをより実用的にします」と付け加えました。この革新は、セキュアな量子もつれが、電力のように遍在し、目に見えないグローバルなコモディティとなる未来への道を切り開く、重要な一歩となります。

ソース元

  • The Debrief

  • Scientists reveal it is possible to beam up quantum signals

  • Quantum entanglement distribution via uplink satellite channels

  • World's first quantum microsatellite demonstrates secure communication with multiple ground stations

  • Breakthrough quantum-secure link protects data using the laws of physics

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