ラテンアメリカの視点で再構築されたクラシック：ホアキン・ホースリーが音楽の境界を再び塗り替える

ロサンゼルスを拠点に活動するピアニスト、作曲家、そしてアレンジャーであるホアキン・ホースリーは、2025年2月7日にリリースされたアルバム『Afro Bach』に収録された楽曲「キューバ風バッハのピアノとトレスのための協奏曲」により、ラテン・グラミー賞の「最優秀アレンジャー」部門にノミネートされました。この功績は、彼の革新的な音楽性が国際的に認められたことを示しています。

この栄誉ある第26回ラテン・グラミー賞の授賞式は、2025年11月13日にラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで開催されました。この都市がラテンアメリカ音楽産業の首都として祭典を主催するのは、今回で15回目となります。

ホースリーの音楽言語：バッハ、ルンバ、そしてオルタナティブな世界

ホアキン・ホースリーが広く知られるようになったのは、ヨーロッパのアカデミックなクラシック音楽とラテンアメリカのリズムを融合させるという、彼独自のスタイルのおかげです。このジャンルを超越した探求は、2016年に彼が制作した有名なアレンジメントから始まりました。

その代表作が、ベートーヴェンの交響曲第7番をキューバのルンバ様式で再解釈した「ハバナのベートーヴェン」です。このアレンジメントはYouTubeで200万回以上の再生回数を記録し、彼のフュージョンに対する注目度を一気に高めました。

最新アルバム『Afro Bach』は、この音楽的探求の系譜を継ぐものです。彼は、ヨハン・セバスチャン・バッハの音楽にアフリカやカリブ海のリズムを融合させ、ホースリー自身が提唱する「オルタナティブな世界」を創造しています。

ホースリーは、この音楽的アプローチについて、次のように表現しています。「ベートーヴェン、ショパン、モーツァルトがウィーンではなくハバナからインスピレーションを受けていたであろう、もう一つの宇宙」を創造しているのだと。

『Afro Bach』には、バロック・クラシックの実験的な解釈が多数収録されています。例えば、以下の楽曲が含まれています。

• 「アフリカのパルティータ（アフロ・バッハ序曲）」

なお、『Afro Bach』は、2019年に開始された「Via Havana」三部作の第3部にあたります。この三部作を通じて、ホースリーはクラシック音楽の伝統に新しい生命を吹き込み続けています。

アレンジャーと作曲家としての多才性

ホースリーの創造性は、アカデミックな音楽シーンの枠を遥かに超えています。彼は、ディズニー映画『Big City Greens the Movie: Spacecation』の音楽制作に携わり、テレビ/メディア制作における最優秀音楽部門でアニー賞にノミネートされました。

この事実は、ホースリーがクラシックの実験、ラテン・フュージョン、そしてアニメーションの音楽伴奏といった、異なる分野で等しく成功を収めているという、彼の計り知れない多才さを明確に示しています。

2025年ラテン・グラミー賞の概況

この年のラテン・グラミー賞は、ラテンアメリカ音楽の極めて広範なスペクトラムを称賛しました。ノミネート数で最も注目を集めたのは、バッド・バニー（12部門）であり、エドガー・バレラ、カトリエル＆パコ・アモロソがそれぞれ10部門で続きました。

また、特別賞として、ラファエルが「ラテン・アカデミー・パーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、生涯功労賞には、スサナ・バカ、エンリケ・ブンブリー、イヴァン・リンス、パンドラ、オルガ・タノンが選ばれています。

この授賞式は、伝統と革新が出会う重要なグローバルプラットフォームとして、ラテン・グラミー賞がその地位を確固たるものにしていることを改めて証明しました。ホースリーの音楽は、バッハがハバナと出会い、伝統が新しい息吹を得る場所であり、彼は単に音楽を別の言語に翻訳するのではなく、その内部に全く新しい宇宙を開拓しているのです。