オンキヨー株式会社は、長年培ってきた音響技術を食品分野に応用し、「Matured by Onkyo」というコンセプトのもと、音による食品の熟成プロセスを革新する取り組みを開始しました。このユニークな取り組みは、吉乃川酒造、デニュアンス、アンダースクレッチとの協業により、福原美穂さんの楽曲を日本酒の醸造過程に活用した「né-ro-zake」(結ね)として結実しました。
この新しい日本酒は、特別な音響発生装置を用いて、醸造タンクに福原美穂さんの音楽を響かせることで製造されています。この技術は、発酵中の日本酒に特定の音の振動を与えることで、その風味や熟成度合いに影響を与えることを目指すもので、オンキヨーは既にこのプロセスに関する特許を取得しています。この革新的なアプローチは、科学的検証を通じて「音楽醸造」の可能性を追求する同社の研究開発の一環であり、東京農業大学との共同研究も進められています。音の波長が酵母の成長や風味成分に与える影響を科学的に解明しようとする試みは、従来の日本酒造りにおける新たな地平を切り開くものです。
音響と食の関係は、近年ますます注目を集めています。研究によれば、音楽は味覚の知覚に影響を与え、食事体験全体を豊かにする力があることが示唆されています。例えば、特定の周波数の音が甘味や旨味を引き立てることがあり、食体験に深みを与えることが報告されています。これは、単に音楽を流すだけでなく、音そのものが持つ特性を食品の製造プロセスに活かすという、より深い次元での探求と言えるでしょう。
世界の日本酒市場も、クラフト酒やプレミアムカテゴリーへの関心の高まりと共に多様化しており、このような独自の技術を用いた商品は、消費者に新たな価値を提供し、日本酒の魅力を再発見させる機会となる可能性があります。
「né-ro-zake」(結ね)は、2025年10月5日に開催されるイベントで先行公開され、その後、デニュアンスのECサイト「音色酒オンラインショップ」にて販売される予定です。この試みは、伝統的な日本酒造りの技術と最先端の音響技術が融合することで、五感を刺激する新たな体験を創造しようとする、創造性と探求心の表れと言えるでしょう。それは、異なる分野の専門家たちが協力し、一つのユニークな製品を生み出すという、現代における協調と革新の精神を体現しています。