バリーカレボーとNotCo、AI活用で革新的チョコレートレシピ開発に着手
編集者: Olga Samsonova
スイスの製菓原料大手バリーカレボー社は、チリを拠点とするフードテック企業NotCo社との戦略的提携を発表し、人工知能(AI)を駆使した革新的なチョコレートレシピの開発に着手した。この協業は、世界的なカカオ価格の高騰という喫緊の課題と、絶えず変化する消費者の嗜好への迅速な対応を目的としている。バリーカレボーは研究開発に多額の投資を行っており、世界中に28の研究開発センターを保有している。
本提携の中核を成すのは、NotCo社が開発したAIプラットフォーム「ジュゼッペ」である。ジュゼッペは、16世紀の画家ジュゼッペ・アルチンボルドにちなんで名付けられ、動物性食品の分子構造、弾力性、風味、食感、香りを植物由来の原料で再現する能力を持つ。このAIは、膨大な成分データを分析し、品質を維持しつつコスト削減を実現する代替材料の組み合わせをシミュレーションする。カカオ価格は構造的な圧力を業界にかけており、ロンドンでは2024年5月に1トンあたり12,567米ドルを記録するなど高水準で推移した。
バリーカレボーとNotCoの連携は、単なるコスト削減策に留まらず、食品製造業界におけるAI統合の広範な潮流を象徴している。NotCo社は、このAI技術を用いて代替ミルクの「NotMilk」や代替パテの「NotBurger」などを展開しており、その技術は米国で12の特許を取得している。AIによるレシピ開発の加速は、製品開発サイクルを短縮し、市場の需要変動に対する企業の俊敏性を向上させる見込みである。例えば、カカオ価格高騰の影響は消費者にも及び、森永製菓がチョコボールの出荷価格を6.5%値上げするなど、具体的な影響が確認されている。
この動きは、カカオ供給の不安定化という背景の中で特に重要性を増している。2023/24年の世界のカカオ生産量は、前年比で約11%減少したと予測されており、気候変動や病害が収量に悪影響を及ぼしている。こうした供給制約の中、フェアトレード製品への需要増加も促されており、2024年にはフェアトレード市場の12.2%をカカオ製品が占め、前年比169%成長したとの報道もある。バリーカレボーは、NotCoとの協業とは別に、チューリッヒ応用科学大学(ZHAW)とも提携し、培養カカオ技術の探求を進めることで、中長期的なサプライチェーンの強靭化を図っている。
ジュゼッペのような高度なAIプラットフォームの導入は、食品イノベーションの新たな地平を切り開く。この技術は、既存の製品の風味を模倣するだけでなく、分析に基づいた新しい風味プロファイルの創造を可能にする。バリーカレボーがAIを活用してレシピを最適化する試みは、原材料コストの変動リスクをヘッジしつつ、消費者が求める品質と持続可能性の要求に応えるための先進的な戦略的布石と見なせる。この技術的統合は、食品産業が直面する経済的・環境的課題に対する具体的かつ建設的な解決策を提示している。
ソース元
FoodBev Media
Reuters
Sustainability Magazine
Food Business News
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