俳優のウィレム・デフォー氏が、第31回サラエボ映画祭で「サラエボの心」名誉賞を受賞しました。この賞は、映画芸術への多大な貢献を称えるものです。
150本以上の映画に出演し、マーティン・スコセッシ監督やウェス・アンダーソン監督ら著名な監督とタッグを組んできたデフォー氏は、「プラトーン」や「フロリダ・プロジェクト」などで記憶に残る演技を披露してきました。実験的な演劇集団「ウースター・グループ」での活動から始まった彼のキャリアは、身体的なアプローチを演技に深みを与えています。
映画祭では受賞に加え、マスタークラスも開催され、将来の映画製作者に向けて貴重な洞察を共有しました。デフォー氏は、「役に入るとき、すべてを事前に知っておきたくはない。驚かされたい、変化したい」と語り、演技は単なる「ふり」ではなく、身体的な行動が感情的な真実へと導く「具現化」であると述べました。また、「演劇は全身全霊を捧げることを教えてくれた。舞台では隠れることはできない。その規律、存在感、作品が『息をする』まで練習すること、それが私と共にあった」と、演劇経験がキャリアに与えた影響を語りました。
サラエボ映画祭は、1995年のボスニア紛争中の包囲下で設立され、東南ヨーロッパで最も権威ある映画祭の一つとして発展してきました。今年の映画祭は8月15日から22日まで開催され、デフォー氏のマスタークラスは、映画製作者と観客との対話を促進し、サラエボを映画教育と知識交流の地域ハブとして位置づけるものです。デフォー氏は25年ぶりにサラエボに戻り、「戦争直後にサラエボに来た。今は別のサラエボだ。長い時間が経った。今はその経験を比較している」と、この街への特別な思いを語りました。7月に70歳の誕生日を迎えたデフォー氏は、自身の経験を「始まったばかりの頃は若かったが、今は年を重ねた。人生を大切にしてください、それはあっという間に過ぎ去ります」とユーモアを交えて振り返りました。
デフォー氏は、ヴェネツィア国際映画祭のヴォルピ杯やベルリン国際映画祭のベルリナーレ名誉金熊賞など、数々の栄誉を受けており、演劇界でも高い評価を得ています。今回のサラエボ映画祭での受賞は、彼の長年にわたる映画界への貢献を改めて称えるものです。