米国大統領がラテンアメリカの麻薬カルテルに対し、武力行使を含む直接的な作戦を許可する秘密指令に署名したと報じられている。これにより、国防総省はこれらの組織が支配する海域および領土内での軍事行動を開始することが可能になる。シナロア・カルテル、MS-13、トレン・デ・アラグア、ソル・カルテルなどが、特別指定グローバルテロリスト(SDGT)に指定された組織のリストに含まれている。国務長官であるマルコ・ルビオ氏は、カルテルを武装テロ組織として再評価することを強く主張しており、SDGT指定により「米国のあらゆる権力、情報機関、国防総省」を活用してこれらの組織を標的とすることが可能になると強調した。この指令は、米国による麻薬密売および関連する暴力への対処における重大なエスカレーションを示唆している。
これに対し、メキシコ大統領クラウディア・シェインバウム氏は、米国による軍事介入のリスクはないと断言し、政府は米国の命令について事前に知らされていたものの、米軍の展開を伴うものではないと説明した。彼女は、メキシコ領土内での米軍の活動は受け入れられないと明言し、主権の侵害にあたるとの立場を示している。一方、米国国務省と司法省は、ニコラス・マドゥロ氏の逮捕または有罪判決につながる情報提供者に対する報奨金を5,000万ドルに増額した。マドゥロ氏は、長年にわたりソル・カルテルを率い、米国への麻薬密売に関与しているとされている。
この動きは、米国が長年ラテンアメリカにおける麻薬問題に対処してきた歴史の中で、新たな局面を迎えたことを示している。1988年には、米国軍は麻薬取締りに年間3億8,900万ドルを費やし、装備の貸与や情報提供を行っていたが、今回の指令は、より直接的かつ武力的な介入の可能性を示唆している。現代のカルテルは、500を超える多様な犯罪集団が活動しており、麻薬密売だけでなく、恐喝や石油窃盗など、その活動範囲を広げている。専門家は、このような広範で分散した犯罪ネットワークを標的とすることの難しさと、予期せぬ結果を招く可能性について指摘しているが、各国が協力し、より包括的なアプローチを通じて、地域全体の安全と繁栄を築くための機会ともなり得る。