2025年9月13日、NASAの太陽観測衛星「SDO」は、太陽表面にハート型のコロナホールという珍しい現象を捉えました。この出来事は、太陽のダイナミックな活動の一端を宇宙からのメッセージとして伝えたかのようです。
コロナホールとは、太陽の外層大気であるコロナにおいて、磁場が弱まり、太陽風が宇宙空間へ勢いよく放出される領域のことです。これらの領域はプラズマ密度と温度が低いため、X線や紫外線で観測すると暗い「穴」のように見えます。これは実際の穴ではなく、プラズマの状態の違いによる見かけ上の特徴です。
今回観測されたハート型のコロナホールからは太陽風粒子が地球の方向へ流れ出し、高緯度地域では美しいオーロラ現象を引き起こしました。この特徴的な形状を持つコロナホールは、太陽の自転とともに地球から離れていく軌道上にあります。
この観測は、約11年の周期で変動する太陽活動が、2025年7月頃にピーク(極大期)を迎えたと予測される時期にあたります。太陽活動が活発な時期から静穏期へと移行する過程で、このような様々な形態のコロナホールが出現する可能性があります。
太陽のコロナは、表面温度(約6,000℃)とは対照的に100万℃を超える超高温プラズマで構成されており、その加熱メカニズムは長年の謎の一つです。磁場活動や微細な爆発現象(ナノフレア)などが原因として研究されています。今回観測されたハート型のコロナホールは、太陽の複雑な磁場構造が作り出す現象の一例であり、太陽のダイナミズム理解に貴重な手がかりとなります。
太陽活動の継続的な観測は、地球の宇宙環境(宇宙天気)を予測し、私たちの生活や技術インフラを守るために不可欠です。このハート型のコロナホールは、宇宙からの壮大な自然現象であり、生命の源である太陽と私たちの惑星との深いつながりを改めて感じさせてくれます。