2025年ノーベル物理学賞:巨視的量子トンネル効果とエネルギー量子化の発見

編集者: Vera Mo

2023年、スウェーデン王立科学アカデミーは、ジョン・クラーク氏、ミシェル・H・デヴォレ氏、ジョン・M・マルティニス氏の3名にノーベル物理学賞を授与すると発表しました。受賞理由は、「電気回路における巨視的量子トンネル効果とエネルギー量子化の発見」です。この画期的な研究は、これまで素粒子レベルでしか観測されてこなかった量子現象が、巨視的な系においても顕現することを示した実験です。この発見は、量子コンピューティング、量子暗号、超高感度センサーといった先端技術の開発に不可欠な基盤となりました。受賞者3名は、賞金1100万スウェーデン・クローナ(約1億円超)を均等に分け合います。

ジョン・クラーク氏は1942年、英国ケンブリッジ生まれで、ケンブリッジ大学で物理学の博士号を取得しました。長年にわたり超伝導体の量子特性の研究に注力し、巨視的系における量子力学の理解と応用を深める実験を行ってきました。特に、超高感度磁束検出器である超伝導量子干渉計(SQUID)の開発とその応用に関する研究で知られています。ミシェル・H・デヴォレ氏はフランス・パリ出身で、パリ南大学で博士号を取得後、イェール大学やカリフォルニア大学サンタバーバラ校で教授を務めました。カリフォルニア大学バークレー校でのクラーク氏およびマルティニス氏との共同研究は、巨視的な電気回路における量子トンネル効果の観測を実証する上で極めて重要でした。

ジョン・M・マルティニス氏は1958年生まれで、カリフォルニア大学バークレー校でジョン・クラーク氏の指導のもと博士号を取得しました。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授を経て、現在はGoogle Quantum AIの主任科学者を務めています。彼の貢献は、超伝導回路が巨視的なスケールで量子特性を示すための実験装置の構築と精密な調整にありました。特に、ジョセフソン接合を用いた量子ビットの研究開発において中心的な役割を果たし、2019年にはGoogleチームと共にプログラマブル超伝導プロセッサを用いた量子超越性の達成を発表しています。

この研究は、1980年代に実施された一連の実験によって実証されました。これらの実験では、手に持てるほどの大きさの電気回路において、量子トンネル効果とエネルギー準位の量子化が観測されました。これは、通常は微視的な世界でしか観測されない現象が、より大きなスケールでも現れることを示した点で画期的でした。この発見は、現代のデジタル技術の基盤となる量子力学の応用範囲の広さを示唆しています。このノーベル賞は、基礎物理学研究の重要性と、それが現代技術の進歩に与える計り知れない影響を改めて浮き彫りにするものです。この研究成果は、次世代の量子技術、すなわち量子コンピューター、量子センサー、量子暗号などの開発を加速させる可能性を秘めています。例えば、クラーク氏が開発したSQUIDを用いた量子アンプは、暗黒物質の探索にも応用されています。量子力学の原理は、スマートフォンをはじめとする現代の多くの技術の根幹をなしており、この発見はその重要性を一層高めるものです。

ソース元

  • infobae

  • Nobel Prize in Physics 2025

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