チリの研究チームによる最新の研究で、オレガノ(Origanum vulgare L.)の精油がインスリン抵抗性やグルコース取り込みの改善に寄与する可能性が示唆されました。この発見は、肥満や2型糖尿病といった代謝性疾患に対する新たなアプローチの可能性を広げるものです。
研究は、オレガノ精油に含まれるフェノール類やその抗酸化作用が、パルミチン酸によって引き起こされるインスリンシグナル伝達の障害を軽減し、脂肪細胞におけるグルコース取り込みを改善するメカニズムに焦点を当てています。肥満はインスリン抵抗性と深く関連しており、特に飽和脂肪酸であるパルミチン酸は、インスリンシグナル伝達の阻害や酸化ストレスを誘発することが知られています。
研究チームは、パルミチン酸で処理したヒト脂肪細胞(SW872)を用いて実験を行いました。その結果、オレガノ精油(OVEO)は、実験で使用された濃度範囲(0.1~10 µg/mL)において細胞毒性を示さないことが確認されました。さらに、パルミチン酸によってインスリン刺激によるIRS-1、AKT、AS160のリン酸化が低下し、グルコース取り込みが阻害される現象が見られましたが、オレガノ精油を併用することでこれらの機能が回復・改善されることが観察されました。
オレガノ精油の主成分であるカルバクロールやチモールといったフェノール類は、強力な抗酸化作用を持つことが知られており、これがパルミチン酸によるインスリンシグナル伝達の障害を軽減する鍵となると考えられています。この研究成果は、代謝性疾患の管理における天然由来成分の可能性を示唆するものです。
今後の研究では、動物モデルを用いたin vivo試験に進み、これらの効果の検証と作用機序のさらなる解明が予定されています。最終的には、ヒトでの臨床試験を通じて、安全性、毒性、バイオアベイラビリティを評価し、その有効性を確立することが不可欠です。オレガノ精油のような天然抽出物は、低コストで多様な生理活性物質を含み、相乗的に作用することで健康に良い影響を与える可能性があります。しかし、その成分のばらつきや標準化には課題も残されており、治療応用には厳密な科学的エビデンスが求められます。この研究は、オレガノ精油がインスリン感受性の改善に寄与する可能性を示唆しており、将来的な健康維持への応用が期待されます。