トルコ共和国ブルドゥル県に位置する古代都市サガラッソスで、ローマ時代に作られたとされる珍しいエジプトのスフィンクス神トゥトゥのレリーフが発見されました。この大理石の遺物は、ローマ時代の浴場施設から発掘されたものです。この発見は、ローマ帝国時代における東方とエジプト間の活発な交流を示す貴重な手がかりとなります。
スフィンクス神トゥトゥです。トゥトゥは守護神として描かれています。このレリーフでは、トゥトゥは王権を象徴するホルス、そしてナイル川の力を象徴するソベクと共に描かれています。この組み合わせは、神聖な王権と守護の神々への信仰が、当時の文化圏で共有されていたことを示唆しています。
サガラッソスの発掘調査を率いるビルケント大学の考古学教授、ピーター・トーレン氏は、サガラッソスがエジプトとの間に商業的な結びつきを持っていたことを指摘しています。発見された大理石はアフヨンカラヒサール地域産のものであることが確認されており、これは地域の職人技の高さを示すと同時に、交易ルートを通じて様々な地域から材料が集められていたことを物語っています。サガラッソス自体、ユネスコ世界遺産暫定リストにも登録されている重要な遺跡です。
このトゥトゥ神のレリーフは、単なる芸術作品以上の意味を持っています。それは、古代都市サガラッソスが単なる交易や経済の中心地であっただけでなく、芸術的、そして象徴的な交換のハブでもあったことを示しています。ローマ帝国時代、広大な交易網を通じて、文化や宗教的な概念が国境を越えて伝播していきました。特に、エジプトの神々への信仰は、地中海世界全体に広がり、各地で地元の信仰と融合していきました。
サガラッソスのような都市での発見は、古代の人々がどのようにして異なる文化や信仰を受け入れ、自らのものとしていったのかを理解する上で、非常に重要です。このレリーフは、過去の文明が持つ豊かな精神性と、現代社会における文化交流の重要性を静かに語りかけているかのようです。