アルベルト・アインシュタインが100年以上前に予言した重力波が、宇宙の物質形成、ひいては星や銀河、惑星の誕生に寄与したとする新たな理論が提唱されています。この研究成果は、学術誌「Physical Review Research」に掲載されました。
これまで宇宙の均一性を説明する有力なモデルとしてインフレーション理論が考えられてきましたが、この理論は多くの調整可能なパラメータを含み、検証が難しいという側面がありました。しかし、今回提案された理論では、時空自体の自然な量子ゆらぎである重力波が、物質密度の微小な差異を生み出し、それが星や銀河、惑星といった天体構造の形成につながったと説明しています。この新しい理論は、インフレーション理論で仮定される宇宙の急膨張を引き起こしたとされる「インフラトン場」といった仮説的な場を必要としない点を強調しています。代わりに、重力波こそが時空の自然なゆらぎとして、天体形成の原動力となったと主張しています。
この理論の検証は、天文学的な観測を通じて可能になると考えられています。宇宙の大規模構造の観測や、初期宇宙に存在したとされる原始重力波の測定が、この新しい理論の正しさを証明または否定する鍵となります。2016年2月には、LIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)によって初めて重力波が直接観測され、宇宙の謎を解き明かす新たな窓が開かれました。この観測は、太陽質量の約29倍と36倍のブラックホールが合体した際に放出された重力波を捉えたものでした。さらに、日本のKAGRA(かぐら)のような重力波望遠鏡も、この分野の研究を推進しています。
この新しい理論は、宇宙の構造形成における重力波の役割に光を当て、宇宙の起源と進化の理解を深める上で、新たな視点を提供しています。