最近の研究により、原始ブラックホール（PBH）が初期宇宙におけるクエーサーや電波銀河の形成の種となった可能性が示唆されています。スウィンバーン工科大学の研究者らによると、PBHはビッグバン直後の数千年以内に、初期宇宙の放射環境におけるわずかな変動が原因で形成された可能性があります。
これらのPBHは重力的な種として機能し、周囲のガスや塵を引き寄せることで、クエーサーの中心にある超大質量ブラックホールへと成長したと考えられています。クエーサーの光度関数（QLF）の予測とこの理論の一致は、PBHがクエーサー形成に不可欠であった可能性を示唆しています。さらに、クエーサーの中心にある超大質量ブラックホールに小さな銀河が飲み込まれる際に、クエーサーの光の燃料を提供した可能性も指摘されています。
この理論は、クエーサーと電波銀河との関連性も示唆しています。クエーサーがPBHから形成される場合、それらはやがて落ち着き、周囲の物質を消費し尽くした後、電波銀河へと進化する可能性があります。クエーサーと電波銀河の光度関数には類似性が見られますが、電波銀河は全体的な振幅が小さく、寿命はクエーサーの約10倍であると予想されています。
この理論は、クエーサーのエネルギー源という長年の謎に対する潜在的な解決策も提供します。PBHは、周囲の銀河を飲み込む際に、クエーサーの光に必要なエネルギーを供給した可能性があります。また、PBH起源のクエーサーは、タイプIa超新星と同様に、宇宙論的な距離を測定するための標準光源として利用できる可能性も秘めています。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）による今後の観測データは、この研究を検証する上で決定的な役割を果たすと期待されています。新しいデータが理論の予測と一致すれば、科学界での支持を得ることになるでしょう。この研究は、クエーサーと電波銀河の形成メカニズムの理解を深め、初期宇宙の進化に関する我々の知識に重要な影響を与える可能性があります。