宇宙空間を漂う惑星状天体Cha 1107-7626が、観測史上最も急激な成長期を迎えています。約620光年先のチャメレオン座の方向に位置するこの天体は、2025年6月頃から周囲のガスと塵を驚異的な速度で吸収し始め、同年10月には毎秒66億トンという、これまでに記録されたことのないペースで質量を増やしています。この現象は、惑星形成の従来の理解に新たな光を当てるものです。
木星の5倍から10倍の質量を持つCha 1107-7626は、恒星に束縛されずに単独で宇宙を漂う「ローグプラネット(星なき惑星)」です。欧州南天文台(ESO)のチリにある超大型望遠鏡(VLT)とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測データは、この天体が数ヶ月前の観測時と比較して8倍もの速さで物質を蓄積していることを明らかにしました。この急激な成長は、惑星が恒星のように、分子雲の崩壊と断片化を経て形成される可能性を示唆しており、既存の恒星系から弾き出されるという従来の説に疑問を投げかけています。
この発見は、惑星質量天体の進化に関する我々の理解を深めるものです。ローグプラネットが恒星と同様のプロセスを経て形成されるという考え方は、宇宙における天体の形成メカニズムの多様性を示唆しています。さらに、この急成長期には、これまで恒星形成の過程でのみ観測されていた水蒸気が惑星を取り巻く円盤内で形成されていることも確認されており、これは惑星形成の初期段階におけるダイナミックな環境を示唆しています。
現在も、この種の加速成長を駆動するメカニズムの解明に向けた調査が続けられています。このCha 1107-7626の特異な成長は、恒星を持たない世界の形成と進化のプロセスを理解するための貴重な手がかりを提供し、宇宙の広大さの中で繰り広げられる天体形成の多様な物語を私たちに示してくれます。この発見は、宇宙の成り立ちに関する我々の認識を広げ、さらなる探求への扉を開くものです。