2025年9月28日、今年10個目の熱帯低気圧となった台風ブアロイがベトナム中部沿岸に上陸しました。最大風速133km/hの暴風と1メートルを超える高潮は、鉄砲水や土砂崩れを引き起こし、甚大な被害をもたらしました。この猛烈な気象により、少なくとも11人が死亡し、17人が行方不明となっています。沿岸部や低地の住民数千人が避難し、ダナンやフエといった主要都市では数十万人が安全な場所へ移送されました。沿岸の4つの空港が閉鎖され、航空便にも大きな影響が出ました。
台風の中心は北緯18.3度、東経107.4度、ベトナム北中部沿岸付近に位置していました。当局はベトナム中部および北部全域に対し、強風、荒海、大雨に関する警報を発令し、住民に警戒を呼びかけ、公式な指示に従うよう促しました。ブアロイは、フィリピンでは「オポン」としても知られ、2025年の太平洋台風シーズンで20番目の命名嵐であり、9番目の台風でした。9月22日にヤップ島の北で発生した熱帯擾乱が発達し、9月23日には合同台風警報センター（JTWC）によって「26W」、日本気象庁（JMA）によって「ブアロイ」と命名されました。9月24日には熱帯低気圧に、その後西南西に進みながら激しい熱帯低気圧へと発達しました。ブアロイは東ビサヤ諸島とミマロパ州に6回上陸した後、ミンドロ海峡を通過し、JTWCによってカテゴリー1相当の台風へと発達しました。フィリピンでは、少なくとも13人が死亡、39人が負傷、13人が行方不明となる甚大な被害をもたらしました。
ベトナムでは、9月29日未明にハティン省に上陸し、カテゴリー2相当の台風にまで発達しました。この台風は、過去の台風と比較しても移動速度が速く、9月26日から28日にかけて1,000キロメートル以上を移動し、ベトナム北部および中部の本土に直接影響を与えました。この速さは、東シナ海におけるこれまでの台風の中でも最も速いとされています。上陸時の最大風速は117km/hでしたが、北中部ベトナムの山岳地帯では、鉄砲水や土砂崩れのリスクが非常に高いと警告されています。特に、タインホア、ゲアン、ハティン各省の西部地域では、鉄砲水や土砂崩れの危険性が高く、タインホアからハティンにかけて広範囲で洪水が発生する可能性があります。また、嵐による大雨の影響で、北部デルタ地帯南部でも局地的な洪水が発生する可能性があります。
ベトナム当局は、この脅威に備え、約3万人の住民を避難させました。また、中部地域の4つの空港が閉鎖され、数百便の欠航や遅延が発生しました。過去の台風（例：カジキ、ソウリック、プラピルン、ウィファ、および以前の嵐番号5号と10号）の事例から、たとえ中程度の風力であっても壊滅的な洪水、道路の流出、長期にわたる停電を引き起こすことが示されています。今回のブアロイによる直接的な甚大な影響とそれに続く事態は、5日から7日間続き、復旧にはさらに数週間を要すると予想されます。広範囲にわたる洪水、土砂崩れ、交通網の寸断、ライフラインの停止、そして事業運営やサプライチェーンへの物質的な影響が懸念されます。特に、山岳地帯や河川流域は土砂崩れや鉄砲水の危険性が高く、主要河川沿いや湾岸の低地は高潮や浸水の危険性が高まります。ダナンのような都市部では、排水能力の限界が問題となる可能性があります。さらに、環境への影響としては、土壌浸食、瓦礫を伴う洪水、生息地へのストレスが考えられ、下水の本管からの溢れも発生する可能性があります。通信も断続的に途絶える可能性があり、調整が困難になるかもしれませんが、都市部では主要な通信網の障害は起こりにくいと見られています。