パキスタン北西部、特にブネル地区は、8月15日(金)に発生した記録的な集中豪雨により壊滅的な鉄砲水に見舞われました。わずか1時間で150mmを超える降雨量が地域を襲い、広範囲にわたる破壊を引き起こしました。この激しい雨は大規模な土石流を引き起こし、村々を押し流しました。その結果、少なくとも337人が死亡し、ブネル地区だけで207人の犠牲者が出ています。現在、救助活動が進められていますが、損傷したインフラと断続的な雨により困難を極めています。
当局は9月初旬にかけてさらなる大雨の可能性を警告しており、地域は引き続き警戒態勢を敷いています。この出来事は、気候変動に起因する異常気象現象に対するパキスタンの脆弱性を浮き彫りにしています。専門家によると、集中豪雨は近年頻度が増加しており、その原因の一部は気候変動にあるとされています。さらに、山岳地域での無計画な開発が被害を拡大させています。
気温が1℃上昇するごとに、空気中に保持できる湿気が約7%増加し、激しい雨の可能性が高まります。インド洋とアラビア海の温暖化は、パキスタン周辺の大気により多くの湿気を送り込み、氷河や雪の融解は地域の気象パターンを変化させ、降雨イベントをより予測不可能で極端なものにしています。森林破壊や湿地の喪失といった環境破壊は、土地の水吸収能力を低下させ、鉄砲水を悪化させています。
パキスタンは、世界で最も気候変動の影響を受けやすい国の一つであり、異常気象イベントに頻繁に直面しています。2022年のモンスーンによる壊滅的な洪水では、国の3分の1が水没し、約1,700人が死亡しました。今回のブネル地区での出来事は、気候変動が地域社会に与える深刻な影響を改めて示しています。当局は、早期警報システムの重要性を認識しつつも、集中豪雨の予測の難しさと、その発生の速さが住民への避難勧告を困難にしている現状を指摘しています。住民からは、避難勧告が遅れたことへの不満の声も上がっていますが、政府は早期警報システムは存在したものの、事象の急激な発生により対応が追いつかなかったと説明しています。今後の対策として、インフラ整備や、より効果的な早期警報システムの構築が求められています。