2025年9月15日、世界貿易機関(WTO)の漁業補助金禁止条約「魚一号」が正式に発効しました。ブラジル、ケニア、トンガ、ベトナムを含む111の加盟国がこの条約を批准し、海洋の持続可能性強化に向けた新たな一歩を踏み出しました。
「魚一号」は、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業を助長する政府の補助金を禁止することを目的としています。特に、公海を含む国際水域での漁業に対する補助金に制限を課し、IUU漁業や過剰漁獲された資源の搾取を支援する補助金を標的としています。批准国は、WTOに対し、漁業補助金に関する詳細なデータ、魚種資源の状態、管理状況、漁獲情報を提供することが義務付けられています。
この画期的な条約の発効は、海洋保護における国際協力の新たな章を開くものと評価されています。多くの専門家は、持続可能な漁業慣行の促進と海洋資源の枯渇防止に貢献する重要な一歩であると見ています。しかし、一部の国々、特に開発途上国からは、条約の実施能力や交渉の遅延に対する懸念も表明されています。
アフリカ大陸では、漁業が食料安全保障と雇用に不可欠であるにもかかわらず、条約の批准が23カ国にとどまっており、大陸全体でのコンセンサス形成が課題となっています。この状況を支援するため、1800万ドル以上の拠出が約束された「WTO魚基金」が設立され、開発途上国への技術支援と能力構築が図られています。
一方で、「魚二号」として知られる、過剰漁業能力や過剰漁業につながる補助金に対処するための交渉は、依然として停滞しています。2024年3月のWTO第13回閣僚会議でも、加盟国間の意見の相違から最終合意には至りませんでした。海洋の生物多様性と健全性にとって、「魚一号」の成功と「魚二号」の今後の進展は極めて重要です。
海洋専門家は、気候変動と過剰漁業が海洋の健全性と生物多様性に対する最大の脅威であると指摘しており、これらの問題に対処するためには科学的進歩と政策の連携が不可欠であると強調しています。海洋保護区の設定や持続可能な漁業管理の地域的アプローチは、既に海洋環境の改善に良い影響を与えています。