2025年8月16日から9月19日まで、ノルウェーの研究船「クロン・プリンス・ハーコン」が北極海を航海し、i2B(Into The Blue)北極海探検2025が実施されています。この探検には25名の科学者が参加しており、約13万年前と40万年前の北極の気候を再構築するため、過去の氷期間の堆積物コアの採取を目的としています。これらの時代、北極海は季節的に海氷がない状態でした。
この研究は、当時の温暖な気候条件下での北極海の海氷消失の影響を理解することを目指しています。欧州研究評議会(ERC)のシナジーグラント「i2B – Into The Blue」によって組織・資金提供されており、ノルウェー極地研究所、アルフレッド・ウェゲナー研究所(ドイツ)、NORCE気候環境研究所、ベルゲン大学などが参加しています。アルフレッド・ウェゲナー研究所は30年以上にわたり北極圏で活動しており、北極海における長期的な学際的研究を行っている世界でも数少ない機関の一つです。
「クロン・プリンス・ハーコン」は、厚さ1メートルまでの氷を砕く能力を持つ最新鋭の砕氷研究船で、北極海のような厳しい環境での観測に適しています。この船はノルウェー極地研究所が所有し、UiT北極大学、ノルウェー極地研究所、海洋研究所の間で研究時間が配分されています。
過去の気候記録と現代の観測データ、そして気候モデルを比較することで、このプロジェクトは北極が同様の「ティッピングポイント」(臨界点)に近づいているかどうかを判断しようとしています。北極の気候システムが温暖化にどのように反応するかについての貴重な洞察を提供することで、現在の気候変動の理解に不可欠な文脈を与えます。特に、過去の氷期間における海氷消失の状況を研究することで、将来の氷のない北極海がもたらす具体的な影響について、科学者たちは予測を立てることができるかもしれません。