オスロのビョルビッカ地区の港湾部で、数千点に及ぶ保存状態の良い中世の革製品が発掘されました。これらの発見は、13世紀から14世紀にかけてのノルウェーの人々の日常生活を垣間見せる貴重な機会を提供します。
ノルウェー海洋博物館とノルウェー文化遺産研究所が共同で発掘調査を主導しました。水に浸かり粘土質の多い港湾環境が、2,900点を超える遺物を、その大半を占める革製品を中心に驚くほど良好な状態で保存していました。
発見された遺物の中には、227足以上の靴が含まれており、今後も発掘は続くと予想されています。これらの靴は、シンプルなデザインから背の高いブーツまで、当時の多様な履物スタイルを示しています。特筆すべきは、そのうち40足以上が子供用サイズであったことで、中世の子供たちの生活様式を知る上でユニークな手がかりとなります。
さらに、当時の人々がポケットの代わりに必需品を入れて持ち運んだであろうバッグや財布が20点以上見つかりました。装飾が施されたものもあり、当時の職人技をうかがわせます。また、ナイフの鞘も多数発見されており、ナイフを携帯することが一般的であった当時の習慣を反映しています。これらの鞘の中には、装飾的なデザインが施されたものもあり、当時の工芸技術の高さを示しています。
ビョルビッカ地域は、かつてアルナ川の河口にあった港の一部でした。遺物は季節的な洪水によって堆積し、長年にわたり港の環境下で保存されてきたと考えられています。この地域は、11世紀に首都となったオスロの歴史とも深く関わっており、当時の港湾都市としての賑わいを物語っています。
この重要な発見は、中世オスロの物質文化、ファッション、職人技、そして社会習慣に関する貴重な洞察を与えてくれます。例えば、当時の靴の多様性は、社会階層や職業による違いを示唆している可能性があります。また、発見された革製品の品質は、当時の革加工技術の高さを示しており、交易を通じて様々な技術が取り入れられていたことが伺えます。ノルウェーの歴史において、14世紀はデンマークとの同君連合が形成され、政治的にも大きな変動があった時代ですが、こうした日用品の発見は、当時の人々の暮らしのリアリティを伝えてくれます。さらに、ノルウェーの歴史を紐解くと、19世紀にはスウェーデンとの同君連合を経て、20世紀初頭に独立を達成しており、この革製品の発見は、長い歴史の中で培われてきた文化の一端を現代に伝えています。