エジプトのシナイ半島にある古代のターコイズ採掘場、セラビト・エル・ハディムで発見されたプロト・シナイ文字碑文の最新の高解像度画像と3Dスキャンにより、モーセに関する最古の非聖書的言及が含まれているという主張がなされています。独立研究者のマイケル・S・バー＝ロン氏は、これらの碑文に「これはモーセからのもの」といったフレーズが見られると提案しています。
これらの碑文は約3,800年前の中期青銅器時代のもので、20世紀初頭に考古学者サー・フリンダーズ・ペトリーによって初めて発見されました。プロト・シナイ文字で書かれており、これはアメンエムハト3世の治世中にセム語を話す労働者によって使用された初期のアルファベット文字体系です。バー＝ロン氏の分析によると、これらの碑文はエジプトのヒエログリフに精通しているが、新しいアルファベットで作業していた単一の書記によるものを示唆しています。これが証明されれば、聖書のモーセという人物と古代エジプトの歴史的出来事を結びつける具体的な証拠を提供することになります。
しかし、この主張は学者たちの間で議論を巻き起こしています。ブリティッシュコロンビア大学のエジプト学者であるトーマス・シュナイダー博士は、この解釈は証明されておらず、誤解を招く可能性があると批判し、その方法論に疑問を呈しています。この論争にもかかわらず、これらの碑文への新たな注目は、古代エジプトにおけるセム語を話す労働者の文化的・言語的世界への洞察を提供しています。これらの発見を検証するには、さらなる学術的な検討が必要です。
プロト・シナイ文字は、約19世紀から16世紀にかけての青銅器時代中期に遡り、アルファベットの起源における重要な段階を示しています。この文字体系は、エジプトのヒエログリフから派生したと考えられており、後のフェニキア文字、ギリシャ文字、そしてラテン文字へと繋がる多くの現代アルファベットの共通の祖先とされています。この文字の発見は、古代の書記体系の進化と、聖書に登場する人物との潜在的な関連性についての理解を深めるものです。バー＝ロン氏の解釈が学術界で広く受け入れられるかどうかは、今後のさらなる研究と検証にかかっています。