ハビエル・ミレイ大統領率いるアルゼンチン政府は、国の経済構造を抜本的に改革するため、民営化と経済規制緩和を強力に推進しています。これらの政策は、2024年6月から2025年10月にかけて実施されており、国内経済だけでなく、アルゼンチンで事業を展開する国際企業にも大きな影響を与えています。
2024年6月に上院の承認を得た「自由のためのアルゼンチン国民の基盤と出発点」法（Ley Bases）は、経済および労働市場の広範な規制緩和を目指すものです。この法律は、大統領に特定の分野で議会の承認なしに統治する権限を1年間付与し、経済活動の自由化を加速させる基盤となっています。
民営化の動きも活発化しています。2024年10月には、米国のARCエナジーがエネルギー関連企業IMPSAの経営権を取得しました。これはミレイ政権下での最初の主要な民営化案件であり、事業継続と雇用維持が約束されています。また、2025年2月には、資産480億ドル、預金330億ドル、純資産150億ドルを持つ国内最大級の金融機関であるアルゼンチン国立銀行（Banco de la Nación Argentina）が株式会社化され、将来的な民営化や外部資本の受け入れへの道が開かれました。さらに、2025年7月には、ブエナスアイレスとその周辺地域で380万世帯に水・衛生サービスを提供するAySAの民営化プロセスが開始されました。計画では、株式の90%を公開入札を通じて民間投資家に譲渡することを目指しています。2006年の再国有化以降、同社は財務省から年間平均134億ドルの資金援助を必要としており、インフラの老朽化や運営コストの増加が指摘されています。
これらの改革は、アルゼンチンのビジネス環境に不確実性をもたらす一方で、国際企業にとっては新たな機会も提供しています。規制緩和と民営化は、市場の効率化、競争力の向上、そして国際的な投資の呼び込みを目的としています。企業は、変化する市場環境への適応、新たな規制への対応、そして政治的・経済的リスクの評価が求められます。経済の安定化に向けた政府の取り組み、例えばインフレ率の劇的な低下（2024年11月には月次インフレ率が2.4%に低下）や財政黒字化（2008年以来初）は、長期的な事業展開における信頼性を高める可能性があります。
ミレイ政権の経済政策は、過去の経済モデルからの大胆な転換を示しており、国の経済構造をより市場志向へとシフトさせることを意図しています。これらの改革は、アルゼンチン経済の活性化と国際競争力の向上を目指すものであり、その進展は今後のアルゼンチンと国際ビジネスの関係を大きく左右するでしょう。