2025年8月7日、フランス国民連合（RN）党は、余剰原子力発電能力をビットコインマイニングに活用するという、エネルギー政策における画期的な提案を行いました。この構想は、余剰電力をデジタル資産に変換することを目指しており、原子力発電所から最大1ギガワットの電力をビットコインマイニングに振り向ける5年間の試験プログラムが提案されています。この計画により、年間1億ドルから1億5000万ドルの収益が見込まれ、原子力発電所のコストを相殺し、新たな公的歳入を生み出す可能性があります。
この提案は、2016年に党首のマリーヌ・ルペン氏がビットコインの禁止を呼びかけた過去の姿勢からの大きな転換点を示しています。当時、同氏はデジタル通貨が市民から管理権を奪い、国際的な銀行システムに権力を集中させると主張していました。しかし、2022年までには、ルペン氏は仮想通貨の規制された利用を支持する姿勢に軟化し、現在ではビットコインマイニングを国家戦略として公然と支持しています。この取り組みは、フランスが抱える電力余剰問題に対処するものです。フランスの電力の70%以上は原子力発電によって供給されており、この余剰電力はしばしばマイナスの電力価格につながり、電力生産者に経済的損失をもたらします。RNの計画は、この余剰電力をビットコインマイニング施設に振り向けることで、国家電力網の安定化と新たな経済機会の創出を目指しています。
この計画は、原子力発電所の運用コストを補填し、国の経済に貢献するだけでなく、エネルギーの有効活用という点で革新的なアプローチを示しています。さらに、マイニング機器が発生させる熱を、温室や建物の暖房などに再利用する可能性も検討されており、エネルギー効率の向上にも寄与すると期待されています。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では、既に同様の熱回収システムが導入されています。この法案はフランス国民議会に提出されており、今後、政治的な議論を経て、その実現性が問われることになります。もし承認されれば、フランスは原子力エネルギーと国家主導のビットコインマイニングを公式に組み合わせる最初の欧州諸国となる可能性があり、他の国々にも影響を与えるかもしれません。この動きは、デジタル資産の活用とエネルギー政策の最適化という、現代の経済戦略における新たな地平を開くものと言えるでしょう。