ボクシング界の伝説、モハメド・アリがベトナム戦争への徴兵を拒否した際の重要な証拠となる、彼の徴兵カードがクリスティーズでオークションにかけられます。このカードは、アリが自身の信念を貫き、ボクシングのタイトルを失うことになった歴史的な出来事を物語る貴重な遺物です。予想落札価格は300万ドルから500万ドルとされています。
この徴兵カードは、1967年3月14日にケンタッキー州ルイビルの徴兵委員会から発行されたものです。アリがイスラム教の信仰とベトナム戦争への反対という自身の信念に基づき、徴兵を拒否した象徴的な行為を示しています。この抵抗により、アリはヘビー級タイトルを剥奪され、ボクシングライセンスも停止されるなど、キャリアの最盛期を失うことになりました。しかし、この決断は彼を単なるスポーツ選手から、公民権運動の象徴的なリーダーへと押し上げました。
オークションは2025年10月10日から28日までオンラインで開催され、ニューヨークのロックフェラーセンターではオンラインオークションに先立って一般公開されます。アリの娘であるラシェダ・アリ・ウォルシュ氏は、「父の勇気と信念のメッセージを思い出すことは、今ほど重要なことはありません。彼の徴兵カードがクリスティーズでオークションに出されることは、その遺産を世界と共有するための力強い方法です」と述べています。このカードはアリの直系の子孫から出品されており、コレクターにとっては、20世紀で最も重要な人物の一人にまつわる、歴史的かつ個人的な文書を手に入れるまたとない機会となります。
アリの徴兵拒否は、当時のアメリカ社会に大きな波紋を広げました。多くの人々が彼の行動を愛国心に反すると非難しましたが、一方で、ベトナム戦争に対する疑問や公民権運動への共感を深めるきっかけともなりました。1971年には、最高裁判所がアリの有罪判決を覆し、彼の潔白が証明されました。この徴兵カードは、単なる紙切れではなく、個人の良心と社会正義のために立ち上がった一人の人間の不屈の精神を体現するものです。この歴史的な文書は、スポーツの偉大さと社会変革への闘いを繋ぐ、貴重な証となります。