1960年型フォード・スペースライナー、アトミックエイジの未来への夢を体現するこの唯一無二のカスタムコンセプトカーが、2025年9月20日にメカムのラリーズ・レガシー・イベントでオークションにかけられます。この象徴的な車両は、当時の技術的楽観主義を捉えるべく、1960年型フォード・フェアレーンをベースに、印象的なバブルトップ・キャノピーとリアジェット・タービンを備えて製作されました。
スペースライナーは、鮮やかなターコイズのメタルフレークの外装と、当時の雰囲気を忠実に再現した白い内装が特徴です。特に、リアには1959年型キャデラックのテールライト10個がジェット噴射口のように配置され、その異世界的な外観を強調しています。この車は、ホットロッド界の伝説であるジーン・ウィンフィールド氏とダリル・スターバード氏の協力を得てスコット・ワイリー氏によって創造されました。彼らの名を冠したダッシュボードのサインは、この車のカスタムカーの歴史における確固たる証です。
1950年代から60年代にかけてのアトミックエイジは、第二次世界大戦後の経済成長と技術革新への熱狂に彩られた時代でした。宇宙開発や航空産業の目覚ましい進歩は、自動車デザインにも大きな影響を与え、未来的なフォルムやジェット機を思わせるディテールが多くのコンセプトカーに取り入れられました。スペースライナーのバブルトップ・キャノピーやジェットタービンを模したリアデザインは、まさにこの時代の「未来は明るい」という楽観主義と、宇宙への憧れを具現化したものです。当時の多くのコンセプトカーがそうであったように、スペースライナーもまた、当時の人々が思い描いた未来の姿を映し出しています。
このユニークな車両は、1960年のワールドフェアでは大きな注目を集めませんでしたが、後にその価値が認められました。2017年には、マイアミで開催されたアート・バーゼルで、ピニンファリーナ氏の審査員特別賞を受賞し、現代のアートやデザインの中でも異彩を放ちました。オリジナルの223立方インチ直列6気筒エンジンとフォード・オートマチック・トランスミッションを搭載しており、そのパワートレインも当時の技術を反映しています。
このスペースライナーは、単なる自動車以上の存在です。それは、かつてのアメリカの想像力と、未来への飽くなき探求心の証であり、自動車デザインの歴史における貴重な一章を物語っています。オークションで新たなオーナーの元へ渡るこの一台は、時代を超えた魅力と、夢を形にした情熱を今に伝えてくれるでしょう。