スペインのブニョール町は、毎年8月最終水曜日に開催される「ラ・トマティーナ」で世界中から注目を集めます。このユニークな祭りは、参加者が大量の熟したトマトを投げ合い、街全体が真っ赤に染まる光景で知られています。2025年8月27日(水)に開催されるこの祭りは、約1時間の熱狂的なトマト投げ合戦を通じて、参加者に忘れられない体験を提供します。
ラ・トマティーナの起源は1945年に遡ります。当時、ブニョールで行われていた祭りの最中に、若者たちが喧嘩になり、近くの八百屋にあったトマトを投げ合ったことが始まりとされています。この出来事がきっかけとなり、翌年からトマト投げが恒例行事として定着しました。当初は地元住民だけの祭りでしたが、そのユニークさが口コミで広がり、次第に国際的なイベントへと発展しました。1959年には公式に許可され、1975年からはブニョール市がトマトを供給するようになり、祭りはさらに大規模化しました。現在では、世界中から約2万人もの人々がこの祭りに参加しており、その人気ぶりから2013年からは参加者数を制限するためにチケット制が導入されています。
祭りは午前11時に「パロ・ハボン」と呼ばれる伝統的なイベントで幕を開けます。これは、石鹸で滑りやすくなった棒の先端に吊るされた生ハムを取ろうとするもので、祭りの開始を告げる合図となります。その後、正午に号砲が鳴るとともに、トマト投げが本格的にスタートします。約120,000キログラムものトマトが用意され、参加者は童心に返ってトマトを投げ合います。祭りの終了を告げる合図の後、トマトを投げることは禁止されます。
この祭りは、単なるトマト投げにとどまらず、参加者同士の一体感や、日常を離れた解放感を味わえる機会を提供します。安全に祭りを楽しむために、参加者にはいくつかのルールが設けられています。例えば、トマトは投げる前に必ず潰して柔らかくすること、ガラス瓶や硬いものの持ち込み禁止、そして衣服を破ったり投げたりしないことが挙げられます。また、トマトを積んだトラックが移動する際には、接触に十分注意が必要です。
ラ・トマティーナは、単なるお祭り以上の意味を持っています。それは、人々が日常の制約から解放され、純粋な喜びと一体感を共有する場です。この祭りは、参加者一人ひとりが、互いを尊重し、共に楽しむことの素晴らしさを体験する機会を与えてくれます。ブニョール町は、このユニークな伝統を通じて、世界中の人々を結びつけているのです。