世界的に、ニュースから意図的に距離を置く「ニュース回避」の傾向がかつてないほど高まっています。ロイター・ジャーナリズム研究所の調査によると、2017年には29%だったニュース回避者の割合が、2024年には40%にまで増加しました。この現象は、情報過多、ニュースが気分に与える悪影響、そして絶え間ない紛争や分断へのうんざり感といった複数の要因が複合的に絡み合った結果として現れています。
多くの人々が、ニュースに触れることで気分が落ち込む(39%)と感じており、情報量の多さに圧倒されている(31%)と指摘しています。また、戦争や紛争といったネガティブな報道への継続的な接触(30%)や、得た情報に対して無力感を感じる(20%)ことも、ニュース回避の大きな動機となっています。特に若い世代、例えば18歳から24歳の間では、ニュースが自分たちの生活と無関係であると感じたり、内容の理解が難しいと感じたりすることが、回避行動につながっています。この傾向は、社会全体の情報リテラシーや市民参加のあり方にも影響を与える可能性があります。
専門家は、このニュース回避の背景には、現代社会における情報消費のあり方そのものの変化があると指摘しています。オックスフォード大学のロイター・ジャーナリズム研究所のニコラス・ニューマン氏は、人々が精神的な健康を保つため、あるいは政治的な話題や紛争に疲弊しているためにニュースから距離を置いていると分析しています。ネガティブなニュースに触れることで生じる「ドゥームスクローリング」と呼ばれる心理状態は、無力感や不安を増幅させ、長期的な精神的影響を与えることが研究で示されています。
このような状況に対し、報道機関側も対応を迫られています。分析的なコンテンツの提供、AIを活用したパーソナライズ、そして人々の関心をより強く引くトピックの掘り下げなど、多様なアプローチが試みられています。一部のメディアでは、ポジティブな話題や建設的なニュースに焦点を当てたコンテンツを増やすことで、読者のエンゲージメントを高めようとする動きも見られます。これは、情報との健全な関わり方を模索する現代社会のニーズを反映したものと言えるでしょう。
ニュース回避は、単に情報から目を背けるという行動にとどまらず、私たちが世界とどのように関わり、情報をどのように受け取るかという、より深い問いを投げかけています。この傾向は、情報との付き合い方を見直し、より意識的な選択を促す機会ともなり得ます。